2015年2月号
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現代日本のイノベーター

不採算事業を復活させたビジネスモデル 過疎地の路線バス事業

谷島 賢(イーグルバス 代表取締役)

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人口減少が続く過疎地からのバス事業者の撤退が相次いでいる。ところが、そんな路線を引き継ぎ、独自のノウハウで乗降客数を劇的に回復し、それを地域創生へと発展させている事業者がいる。海外への「輸出」も決まったそのビジネスモデルとは?
text by Hideyuki Shimada

 

日本各地では、高齢化と人口減少が進む中、公共交通機関(特に路線バス)の不採算路線からの撤退が相次いでいる。事業者が撤退することで、地域の衰退は一層加速する。

しかし、地方創生が喫緊の課題となっている今、果たして、こんなことで良いのだろうか?

そうした思いに応えるように、「会社として地域に貢献しろ」という先代(父親で創業者)の「遺言」を胸に、不採算路線再生に顕著な実績を挙げ、それを地域創生へと結びつけている事業者がいる。埼玉県川越市に本社を置くイーグルバスの代表取締役・谷島賢氏(61)だ。

谷島 賢 イーグルバス 代表取締役

イーグルバスは、日本の旅行会社の先駆的存在イーグルトラベル(1950年~)を設立した先代が、1980年に創業したバス会社である。谷島氏は、2000年に事業を承継し、社長に就任。資本金5,000万円で、年商約10億円。保有バス数は111台。

現在の売上構造は、送迎バス(企業と福祉)5割強、路線バス約3割、観光バスと高速バスがそれぞれ約1割である。

バス会社としては後発であり、規模も中堅レベルだが、ビジネスモデルのソーシャルかつイノベーティブな卓越性ゆえに、情報化の促進に貢献した企業として国土交通大臣賞を受賞し、同省の「小さな拠点」構想(2013)のモデルとして期待されている。さらに、2014年には、ラオス人民民主共和国からの要請を受けて、同国への進出も決まった。

イーグルバスの路線バスは、埼玉県西部エリアの6市町村をカバーしている

出発点は 「川越市の街興し」

川越市と言えば、今や、「小江戸」の名で親しまれ、メディアにも頻繁に取り上げられて、街は観光客で賑わっている。かつてはごく一般的な地方都市だったこの街を、現在のような人気観光地へと押し上げた立役者の一人が、谷島氏である。

「大学を出て東急観光(当時)に勤務していた私は、父から“バス事業をやるから帰ってこい”と言われ、家業に就きました」

1980年、バス3台で特別支援学級のスクールバス事業を始め、やがて、1989年に観光バスの免許を取得。観光バス事業は、当初は、業績も好調だったが、バブル経済は崩壊。受注量が急減し、早急な対応を迫られることになる。

当時の流行語は「安・近・短」。ゴージャスな旅行は下火となり、なるべくお金をかけずに近場で短時間楽しむという風潮が支配的になっていた。

また、川越市を見渡すと、百貨店がある商店街は賑わっていた反面、蔵の立ち並ぶ旧市街は、“シャッター街”化が進行していた。

こうした状況を見て、谷島氏は、蔵の街を巡る、団体貸切制の小江戸観光バスツアーを始める。そして、これが大当たりした。1993年のことだ。

「もともと中型観光バスの免許しか持っていなかったのですが、川越は道路が狭く大型観光バスは入れないため、中型だったことが偶然にも功を奏したのですよ」と笑う。

この成功をベースに、彼は、個人客向けの「小江戸巡回バス」を企画する。

「蔵の街に四角いバスは“無粋”だと思い、昭和を髣髴させるボンネットバスを導入しました。そうしたら、蔵の街とマッチして絵になるということで、メディアに大々的に取り上げられ、“あのバスに乗りたい”というお客様が殺到し、観光地として俄かに活気づいたのです」

このブームは、現在に至るまで発展的に持続し、「小江戸・川越」の名は、全国に轟くまでになった。小江戸巡回バスの2013年度の乗車人員は15万8千人を超えたという。

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