在宅医療サービスのイノベーション

「"TPP時代になったら、富裕層以外、まともな医療を受けられない"ということはありません。必要最低限の金銭負担で、まっとうな医療サービスを受けられることは実証済みです」―新時代の医療へのイノベーションが、今進んでいる。

あなたには、全幅の信頼を寄せることのできる医師はいるだろうか? 「いる」と答え得る人は幸いだ。では、その医師は、あなたの家族(特に高齢者)の身に異変が起きた時、果たして、夜間や休日でも、駆けつけてくれるだろうか? ほとんどの場合、「NO!」だろう。

ところが、それを実現し全国的な注目を集めるクリニックがある。名古屋市(昭和区御器所通)の三つ葉在宅クリニックだ。今回はその代表・舩木良真医師(35)にお話を伺った。

キッカケは、"地域医療の機能不全"

三つ葉在宅クリニックオフィス。真ん中で電話をとっているのが医療ソーシャルワーカーで、地域連携の窓口となっている(新規患者の問合せ電話等に対応)

「名古屋大学医学部在学中は研究医になるつもりでした」と語る舩木さん。

しかし、研修医1年目、日本の医療の在り方に深刻な疑問を感じる。

非常に多くの高齢者が救急外来にやってきて、病院側は彼らを帰そうと躍起になる。大病院は急性期の患者に高度医療を施す場所なのに、地域の医院・クリニックへの信頼感が薄いために、高齢者は、どんな問題であれ、すべて大病院に頼ろうとする。

2015年には、65歳以上の高齢者が日本の全人口に占める比率は26.0%(3277万人)に達するなど、高齢社会化が進展していく中、地域医療が時代の変化に対応できず、機能不全を起こしているとすれば、由々しき事態である。

患者宅でプリントした診療レポートを手渡し、家族に説明を行う

舩木さんは諸外国を視察して回った。

「北欧とニュージーランドで、"コミュニティ・ケア"を目の当たりにしました。高齢者が(病院や施設ではなく)"地域"でそれまで通りの日常生活を営みながら医療を受けているのです。

成熟した国家では、自分の生き方を、自己決定する。日本においても、高齢者が、人生の最後の時期をどう過ごすのが幸せかを自ら決める時代が来ると考えました。私だったら自宅で過ごしたい。そういう人は多いに違いない。在宅医療に大きなニーズが存在すると」

ここでのキーワードは"地域"だ。"家庭"が単位になると、"老々介護による共倒れ"を招来するだけで、問題の解決にはならない。あくまでも、地域の医院・クリニック、ケアマネージャー、訪問看護ステーション、介護事業者などが、強固な連携を構築し、家族の負担を最小限に減らしつつ、高齢者の切実なニーズに対応したサービスを提供することが肝要だ。

舩木さんは、イノベーティブな在宅医療サービスを創出すべく、ビジネススクールに入学し、ベンチャー企業の成功パターンなどを学んだ。

患者宅にて、三つ葉在宅クリニックの医師とソーシャルワーカー、ケアマネ、患者・家族で話をしている地域連携の一コマ

そして、2005年、周囲の猛反対を押し切って、志を同じくする仲間たちと「三つ葉在宅クリニック」を開設。

仲間の医師たちもビジネススクールで経営学を学んでいる。「共通言語を持つことが大切だと思ったからです」と舩木さんは言う。

今や、常勤医師9人、非常勤12人。他に医療ソーシャルワーカー、診療サポート、医療事務。ドライバー、システム担当、総務などスタッフ35人。

市内の8区をカバーし、患者数(=固定客数)は約730人。

患者の年代は、80代が最多で、70代、90代と続く。病状に合わせた定期的な往診に加え、夜間・休日を含めた彼らへの緊急往診は年間2000件を超える。

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