「新モデル」創出で日本にチャンス
医療・介護分野には、イノベーションの可能性が大きく広がっている。その一つが、地域全体で高齢者を看守るしくみだ。そのノウハウは世界に輸出することができ、日本には大きなチャンスがある。
厚生労働省が「社会保障改革に関する集中会議」で発表した2025年の医療改革のシナリオは、ベッド(病院の病床数)を削減し、居住型の訪問診療を増やすというものです。近い将来、さまざまな医療サービスを施設・住宅で行う必要があります。在宅で看取りまで行うには、十分な人員体制と熟練した手技を要求されますが、大学の医学部では、そうした技術は教えていません。
現状の制度では、安心した老後は難しいと言えます。新たなシステムをつくり、病院ではなく在宅で医療依存度の高い高齢者をケアし、街全体で高齢者を看守るしくみづくりが求められているのです。
新たなモデルを名古屋で実践
私は、そのための仕組みをコミュニティ・ベイスト・メディスン(CBM)と呼び、「CBMヘルスケアイノベーションIWAOモデル」として、名古屋で構築しています。それは一言でいいますと、街全体で高齢者を看守るしくみづくりです。
CBMはITを活用した情報ネットワークを用い、「医療・看護・介護が必要な高齢者をケアする専門的技術を持ったスタッフのいる施設(SNF:Skilled Nursing Facility)」を核に、医療機関、介護事業所をシームレスにつなぎ、質の高い医療を効率的に提供するしくみです。
高齢者は、医療度、介護度が月ごとに変わっていきますから、シームレスに医療も介護も適用できるサービスを提供しなくてはなりません。そのために必要なのが、SNFなのです。欧米ではこの考え方が主流になっています。
たとえば、アメリカでは1980年から2000年までの間に病院のベッドを2割減らし、SNFに対応した住居を126万床増やしました。
私は医療法人陽明会の設立に尽力し、SNFの整備を進めてきました。アメリカと違い、日本では大学がそうした事業に取り組むことが困難であるため、CBM実現のアクションリサーチとしてコンソーシアムを築いたのです。
現在は、医療法人の力を借りてサービス付き高齢者住宅の整備を進めています。それが「聖霊陽明ドクターズタワー」で、デイケアサービスと保育園、60床のサービス付き高齢者向け住宅、診療所と薬局を備えた医療・看護・介護・ケアのための複合施設です。
さらにその後ろの施設を、企業と連携して多数設立する計画です。
実際に、シームレスのサービスを提供するには、人材の育成が必要です。
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