農林水産省が食のグローバル展開を支援 攻めの戦略で輸出1兆円に

世界の食市場は、今後10年間で340兆円から680兆円に倍増することが見込まれる。政府は、日本の食産業の海外展開、輸出促進を一体的に展開することにより、拡大する世界のマーケットを取り込むことを目指す。2020年の目標は、1兆円の達成だ。

食ビジネス分野のアベノミクスと言えるのが、農林水産省の「攻めの農林水産業」だ。食の輸出支援で関連産業を一体的に展開し、市場規模が現在の340兆円から680兆円へと10年間で倍増する世界の食市場の獲得を目指す。

農林水産省食料産業局輸出促進グループ長の小川良介氏は、「海外で和食の人気は高く、多くの人たちに支持されています。ただ残念なことに、和食=寿司というイメージだけが強く、日本の食文化はまだまだ正しく理解されていないのが現状です」と語る。

波及効果で相手国にメリット

日本食を世界遺産の一つに加えたいとも強調するが、なかでも健康食としての認知度向上にこだわる。「和食はヘルシーと言われることが多いですが、なぜ健康にいいのか、医学的にもアプローチして世界に情報発信したい」と意欲的だ。

小川良介
農林水産省食料産業局輸出促進グループ長

たとえば日本料理で使用する魚介類のダシは脂肪分抜きでコクや旨みを引き出すことができ、ダイエットで注目されている味噌や醤油などの発酵食品を使用すればさらに味わいを増す。こうした健康食品としての特徴を伝えたいという。

そこで食のジャパン・ブランドを確立するため打ち出したのが、「Made by」、「Made in」、「Made from」の3つの戦略だ。

「Made by Japan」は食文化・食産業のグローバル展開を目指し、食品メーカーや外食産業などが積極的に海外進出できるように支援する。食の輸出でハードルとなるのが各国の農産物保護政策だが、調味料などの加工食品であれば参入しやすく、現地生産すれば輸出も視野に入れられる。

一例を挙げれば、食品メーカーのカゴメは米国に進出してトマトケチャップの原材料となるトマトを栽培から手がけ、主要なピザチェーン店に納めて米国のピザソースのスタンダードとなった。これは単に調味料を輸出するだけでなく、原材料調達によって産地まで作り出した事例といえる。

また、外食産業の進出は食材の現地調達によって各国農産物の消費を活発化させ、多店舗展開で雇用も生み出す。

さらに物流や調理機器など周辺分野もシステムとして持ち込めるので、技術やノウハウの提供となり経済波及効果も大きい。食の輸出を実現しつつ、相手国のメリットも大きくなる仕組みを考えているのだ。

小川氏は、「加工食品で進出した多くの企業は原材料を現地で調達していますが、調味料などは日本からの輸入になります。食品製造業全体で見ても6%程度ですが市場の拡大とともに取引額も大きくなるでしょう」と将来を見通す。

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