6次産業化の課題は人材 市場開拓へ「人づくり」本格化

農業の強化が国の成長戦略で打ち出された。TPP参加を見据え、国際競争力を高めるためには、農業を成長産業として伸ばすことが必至だ。三菱総合研究所の木附誠一主席研究員に、食農ビジネスの課題や可能性ついて話を聞いた。

安倍首相が放った3本目の矢のキーワードは"世界に勝つ"。農業においては、「農林水産物の輸出額を2020年までに1兆円規模にする」、「6次産業化市場を10年間で10兆円に拡大する」、「農地集積による生産性向上」を政策に掲げ、今後10年間で農業所得を倍増させると発表した。成長戦略の柱として競争力を強化し、攻めの農業体制を整える。

6次産業化、地域活性化などをテーマに食料や農業ビジネスの新事業創造に向けたコンサルティングに力を注いでいる三菱総合研究所の木附誠一主席研究員は、「今後、農業が産業としていかに自立していくか」がますます問われることになると見ている。

カルチャーの違いが障壁に

しかし、その実現に向けては課題が山積している。なかでも政策の要の一つ、農業の6次産業化においては、(1)人材不足、(2)産業構造の再編の必要性、(3)農地規制等の問題が横たわる。

「(1)は最も深刻で、農地規模を拡大しても経営者がいないと当然事業として成り立ちませんから、ハードとソフト両面の戦略性が必要です。成功に結びつかない大きな要因は、やはり人材不足です。産業間の垣根を越えた連携コーディネートやプロデュースする能力のある人が不足しています。連携は言葉でいうと簡単ですが、実際は産業それぞれの根強いカルチャーや事業への考え方の相違があり、簡単ではありません」

たとえば、商業と農業では、商品のライフサイクルが違う。コンビニに並ぶ新商品は数週間で入れ替わるのに対し、農産物は最低でも数ヵ月、改良するとなると数年に及ぶ。

ここで重要になるのが、自分たちの強みや利益のみを強調するのではなくて、お互いの違いを認め合うこと。そうした認識に立たなければ連携は進まない。

「コーディネーターやプロデューサーを育て、産業の枠組みを超えてダイナミックに6次産業化を進めて、ビジネスモデルを創出すべきです。現在、一次産業の国内生産額は10兆円程度で輸入額は8兆円程度ですが、飲食料の最終消費額は73兆円以上と、4倍もの規模で付加価値が生まれると試算されています。地域にとどまらず広域的な事業連携に拡充する可能性が広がります」

異業種参入の成功法則

さらに、(2)産業構造の再編問題については、近年、農作物の川上から川下までのサプライチェーンの高度化の必要性が指摘されてきた。IT化が進み個人のネット通販など販売ルートが多様化している現在、従来の単純な構造では対応できず、早急な改革が求められている。

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