家庭、企業、社会、地球を豊かにする会計の原理
これまで5回にわたって事業経営に役立つ実践的な会計の活用法を紹介してきた。最終回の今回はちょっと視点を変え、会計の原理を掘り下げてみよう。小手先の収益改善には役立つものではないが生き方と経営の極意を感じ取って頂けるはずである。
1 会計の対象は4つの領域
会計を「損得計算」のツールと考えている人が多いが、会計はそんな薄っぺらなものではない。敢えて言えば会計は「尊徳計算」である。言うまでもなく二宮尊徳の「尊徳」。存在するものすべてに徳があり、その徳を生かし切るところに新たな価値が創造される、その創造価値の計算なのである。
会計は企業を測定対象とした「企業会計」だけでなく、家庭を対象とした「家庭会計」、国自治体を対象とした「公会計」、そして地球を対象とした「環境会計」の合計4領域にわたる。会計は家庭、企業、国自治体、地球のぞれぞれを豊かに導くための原理と言える。
2 貸借均衡の論理
会計と言えば「バランス」、すなわち借方と貸方は常に一致するという「貸借均衡」を根本原理とする。この原理は「見えない世界が見える世界を支配する」という「幽顕均衡」の原理でもある。
貸借対照表の借方科目は現金預金、商品、土地、建物、機械など「目に見える勘定」であり、これは「顕なる世界」である。他方、貸方は借入金、資本金、引当金、剰余金など「目に見えない勘定」であり、これは「幽なる世界」である。上図は幽なる世界が原因となって顕なる世界を司っていることを示している。下図はこれを企業に当てはめたもの。貸方である社長の企業観は目に見えないが、経営理念や企業文化などに影響を与え借方の企業業績を「成長・発展」か「衰退・破綻」かに導く。
幽なる世界が顕なる世界を支配していることは家庭、企業、国自治体、地球の4領域すべて共通している。家庭で言えば貸方は「家族の信頼観」であり、これがしっかりしている家庭は円満である。国自治体で言えば貸方は「共生意識か利己主義か」という「市民の社会観」が、そして地球で言えば貸方は私たちが地球のいのちとつながっているという「地球生命観」が心豊かで持続可能な社会のカギを握る。
いずれも貸方の幽なる世界を高めることで借方の現象世界を幸せに導くことができることが重要である。
3 人的資産を計上する
ところで「経営は人・物・金」と言われながら貸借対照表には「人」が載っていない。企業の実態を見るには、借方に「人財」、貸方に「人的資本」として「人間力」を補ってみないといけない(下図)。
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