新幹線が変える観光の流れとビジネス

2014年度末に、北陸新幹線の東京―金沢間が開通する。それに呼応するように、県の空港、港湾は国際拠点化を進めている。これらの動きは石川県にどのような影響を及ぼすのだろうか。

現在製造中の北陸新幹線の車両。空の青さを表す空色、伝統工芸の銅器の銅色などを採用(北陸新幹線E7/W7系/本車両は東京~金沢間を運行する予定の車両です/提供:JR東日本)

北陸新幹線の東京~金沢間の開通を14年度末に控え、新駅となる金沢市は活況を呈している。首都圏からのアクセス向上で、県は経済効果をどの程度を見込めるのだろうか。一番の魅力は移動時間の大幅な短縮と乗客の大量輸送だ。これまで鉄道で東京~金沢間は最短で約3時間50分、これが約2時間30分で移動できるようになり東京~京都間、東京~盛岡間とほぼ同じ近さになる。また輸送能力も、運行本数を現在の東京~長野間と同じと考えると年間約1800万席の移動が可能となる。ちなみに現在の金沢駅の乗降客数は年間約1500万人、これに空路からの乗り換え客が加わるためかなりの利用者増が見込まれる。

120億円を超える北陸新幹線の経済効果

「この先は新幹線が福井県まで伸びることになります。ソフト面は各県の特色を出しつつ、ハード面は先行して開業した石川県が見本となります」と語るJR西日本金沢支社長の三浦氏

計画の進捗具合について、JR西日本金沢支社長の三浦勝義氏はこう語る。

「車両は12両編成のものを当社分として10本すでに発注済みで現在製造しているところです。一般車両、グリーン車のほかハイグレードなグランクラスも用意しています。北陸ではじめての開業となるので、乗務員・駅員をはじめ、スタッフをJR東日本などへ出向させるなど指導・育成しているところです。金沢から直江津区間は第三セクターが運営を行なうことになります。並行在来線もあり、色々な調整が必要となってきています。整理が行き届いた状態で第三セクターへお渡ししたいので、その準備も行っています」。

肝心の予想される経済効果について、日本政策投資銀行北陸支店地域企画部の中倉修氏は「時短だけでもかなりの経済効果がある」と語る。同支店が13年3月にまとめた経済波及効果は観光で約61億円、ビジネスで約20億円の計約81億円と見積もる。ただしこれは直接的な効果であり、その誘発による県内生産の拡大や所得増による消費の拡大なども加えると年間約124億円の波及効果があるとみる。

一方、県の見込む生産誘発額は首都圏からの入込客増加で148億円をプラスとし、反対に県民の首都圏への流動で27億円がマイナス効果となり差し引き121億円になるのではないかとする。県は、観光に関しては従来からある温泉地の活性化や歴史と伝統の活用を考えている。たとえば伝統的な和菓子作りを行える体験型の観光や、青柏祭などの祭り、伝統芸能といったイベントで差別化を図り観光客を呼び込むことなども検討する。

心強いのは観光面でのJRのバックアップだ。

国内便、国際便ともに利用者が伸びる小松空港(写真提供:金沢市)

「活性化に向けて一番の目玉となるのは、JR6社(北海道、東日本、西日本、東海、四国、九州)が合同で一つの地域のキャンペーンを行なう『ディスティネーションキャンペーン』に北陸が選ばれたことです。期間は開業後の15年10月から3ヵ月間。JR6社がポスターやテレビ、パンフレット等で大々的に北陸を売り出します。78年に始まったこのキャンペーンは、これまでの実績から数十億円の経済効果が期待できます。開業は決してゴールではありません。開業をきっかけに北陸に来て、リピートしていただくことがなによりも重要です。北陸は、観光地、歴史、食、自然と素晴らしい観光素材がたくさんあるとても魅力的な地域です。その魅力を一人でも多くの方に体験していただけるよう、私たちもお手伝いしていければと考えています」(JR西日本・三浦氏)。

小松、能登空港は国内外の利用者増

石川は空のルートも充実している。小松空港は石川県の空の玄関口として知られ、国内線で東京、札幌、成田、福岡など6路線。国際線はソウル、上海、台北の3路線に加えマカオ、ハワイ向のチャーター便もあり、文字通り国内外を結ぶアクセス拠点として重要な機能を持つ。なかでも国際線は毎年過去最高の利用客を記録し、昨年12月に台北便が毎日運航されるようになったことから、12年度は15万人の利用客を見込む。さらに2年後の北陸新幹線の開業も追い風になると予想され、企画振興部次長の浅井俊隆氏は「観光資源を活かし近隣県と連携しながら海外からの観光客を呼び込みたい」と意気込む。

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