北九州市の技術集積が育む新規事業

シャボン玉石けん 森田隼人 代表取締役社長

北九州市が公害問題と直面し、それを克服する中で様々な技術が育っていった。無添加石けんもその一つだ。人と環境への負荷を下げるための工夫は、さらなる新事業を生みつつある。

「石けん」は、環境への負荷が少ない洗浄剤だ。「洗う」という行為をサポートする「泡」には2つの種類がある。ひとつはテレビCMなどで馴染みのある「合成洗剤」、もうひとつが「石けん」で、前者が様々な化学合成により洗浄成分を生成するのに対し、後者は天然の油脂を原料に生成した「石けん」が主たる洗浄成分の似て非なる存在だ。

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北九州市立大学、
九州工業大学とともに
2010年に立ち上げた
石けんリサーチセンター

ところで、北九州市が深刻な公害問題を乗り越えた歴史を抱える地方都市であることは良く知られる。当時、空を覆った七色の煙や工場排水によるダメージは大きく、日本で最初にスモッグ警報が発令され、湾内を航行する船のスクリューが溶けるほどの酸性廃液によって豊富な水資源も劇的に減少していった。こうした中で、水資源問題と直面してきたのがシャボン玉石けんだ。同社のCMソングとして知られる「青いお空がほしいのね。飛ばしてごらんシャボン玉」のフレーズも、公害に対し最初に立ち上がった婦人会のキャッチコピーから発想を得ている。

シャボン玉石けんは北九州市若松に本社・工場をかまえており、今年で創業103年を迎える。1960年代当時、ドル箱の合成洗剤を無添加石けんに切り替えた先代森田光德氏の時代から、先代の志を次いで切り盛りする代表取締役社長の森田隼人氏へと時代が移る中、「健康な体ときれいな水を守る」という企業理念と無添加石けんにこだわる想いは一貫している。

前述した石けんの肌や環境への負担の少なさは意外と知られていない。同社が合成洗剤から石けん一本に切り替えたのも、先代社長自身が長年患っていた皮膚疾患が石けん使用で治ったことがきっかけである。

北九州だからできた新規事業展開

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