ベンチャーは大企業とどう付き合うのか

これまで日本でイノベーションを担ってきた大企業は、ベンチャーとの関係が薄かった。しかし、ベンチャーのレベルの底上げが大企業との関係性にも変化を及ぼし始めた。

ベンチャーにとって、大企業との付き合い方、接し方は簡単ではない。甘く見ていると痛い目に遭う可能性もあるし、警戒し過ぎているとチャンスを逃すことにもなりかねない。大企業にとっても、一般的な企業と比べてベンチャーは異質の存在だろう。文化が異なるベンチャーと大企業は、互いの関係性をどのように作っていけば良いのだろうか。

住み分けが明確な米国 日本も徐々に米国化

「日本のベンチャーが海外企業に買収されるような動きが出てくると、世界市場で認められているということになる」と語る江端氏

かつてITベンチャーの創業者や日本コカ・コーラのバイスプレジデントとして数々の実績を残し、現在は日本マイクロソフトの業務執行役員として活躍している事業構想大学院大学の江端浩人教授はまず、ベンチャーと大企業の関係性がはっきりしているアメリカと日本の意識の違いを指摘する。

「アメリカでは、新しい技術を世の中に出す場合に、非常に効率が良くコストがかからない方法としてベンチャー投資が確立されています。大企業は、彼らは僕らのために研究開発している、自社の将来に役立つ研究であればM&Aしようというマインドで見ている。市民保護の観点からリスクマネー(一定以上の個人資産がある富裕層の余剰資金)でないとベンチャーに投資できないという投資基準があり、余剰資金をうまくベンチャーに回すような仕組みもあるんですよ」

一方の日本では、アメリカでベンチャーに期待されている役割の多くを大企業が担ってきた。

「日本では従来、特に先端分野のイノベーションに関しては、大企業の新規事業という側面が非常に強かった。それは、製造業などに関して膨大な設備投資の資金が必要になるため、それをベンチャーではなかなか賄えなかったからです」

しかし、最近では日本でも状況は変わってきているという。特にデジタル分野において、ITの著しい発展とともにビジネスに必要なあらゆるコストが下がった結果、人数が多い分、意思決定に時間がかかる大企業に先んじて、スピードで勝るベンチャーが成果を出すようなことも起き始めている。

江端氏は、日本のベンチャーのレベルが全体的に底上げされていると語る。

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