PlayStationVita 過去の成功体験に縛られた高性能ハード

販売台数が伸び病むソニーの携帯ゲーム機「PSvita」。どこに読み間違いがあったのか。苦戦の真因を探る。

ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が昨年11月に発売した新型携帯ゲーム機「プレイステーションVita」の苦戦が続いている。発売から1年が経過しようとしているが、世界での販売台数は8月時点で220万台にとどまっており、今後、急激に普及する可能性も低い。昨年8月の赤字前提の1万円の大胆な値下げによって、2000万台に到達したニンテンドー3Dに大きく水をあけられている。また、9月発売のスマートフォンのiPhone5は発売3日間で500万台を超えた。

ソニーの平井一夫社長は4月の経営方針説明会で、ゲームをコア事業の一つに位置づけ、11年度の5.8%から14年度に売上高1兆円、営業利益率8%を目指すと掲げている。しかし、Vitaがすでに抱えている失敗を取り戻すのは容易ではない。その理由を5点あげたい。

明瞭なメッセージを打ち出せず

第1に、ソニーグループでの商品の位置付けが曖昧なまま、結局、発売日を迎えてしまった。正確には、SCE内でさえ明瞭なメッセージを打ち出せていない。プレイステーション3(PS3)とまったく異なった、Vita独自概念のインターフェイスを持ち、他のソニー製品との連携もほとんどない。それがユーザーにとって何のメリットがあるのも不明瞭なまま、個別のサービスだけは追加が続けられている。典型的な戦力の逐次投入だ。

第2に、SCEに深く根付いてしまった成功体験の払拭の難しさが、ハードウェアの設計思想に深く根付いている。94年の初代PSは、家庭にリアルタイム3Dグラフィックスでゲームを提供できるという画期的なハードウェアだった。しかし、その後は、単純に新規にハードウェア性能を向上させ、シェアさえ取れば成功できるという幻想も生んだ。

00年のPS2までは成功したが、04年のプレイステーションポータブル(PSP)でも携帯ゲーム機にスペックの高さを求め、まったく違った発想で挑んできたニンテンドーDSに歯が立たなかった。

カプコンの「モンスターハンター」シリーズといったキラータイトルによって、日本市場では市場を形成できたが、欧米ではPSPの市場は存在しないに等しい。06年のPS3でも変わらず、結果的に高い価格設定になり、発売から5年で、やっと収益に貢献できる段階になった。

しかし、それでも、Vitaでは再びハード性能が追い求められた。これにより、開発コストの上昇が起きている。PSP時代には数億円程度だったゲーム開発費は、PS3の開発費と変わらないほどになっている。

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