ハザードマップ作りで自助・共助

住民や地域社会による「自助」や「共助」は、災害発生時だけでなく、大規模災害に備える平時の対策においても重要となる。「水害ハザードマップ」を活用してもらい、地域のリスクを理解した上で緊急時に備えてもらうためには、様々な仕掛けも必要となる。

国土交通省水管理・国土保全局河川環境課水防企画室課長補佐
野々村武文氏

住民目線のハザードマップで避難行動に結び付ける

東日本大震災では、行政がすべての被災者を迅速に支援することの難しさや、行政自体が被災して、機能が麻痺する場合もあることが示された。このように「公助の限界」が明らかになる中、住民自身による「自助」や、地域コミュニティにおける「共助」の重要性が改めて認識された。

自助や共助は災害発生時だけでなく、大規模災害に備える日ごろの対策においても不可欠となる。その際、行政機関によって作成された、ハザードマップを活用することが望まれる。

2015年の水防法改正によって国や都道府県、市町村は、想定し得る最大規模の降雨、高潮に対応した浸水想定を実施することになった。さらに、市町村はこれに応じた避難方法等を住民に周知するため、水害ハザードマップを改定することが必要となった。

「2015年9月の関東・東北豪雨災害では、多くの住民が取り残され、救助される事態となりました。その際、ハザードマップが配布されていても住民が見ていなかった、あるいはそこに記載されている情報が住民の避難行動に結び付かなかったという状況が確認されました。そこで、ハザードマップをより避難行動に結び付くものとするため、2016年4月に『水害ハザードマップ作成の手引き』改定が行われたのです」

国土交通省水管理・国土保全局河川環境課水防企画室課長補佐の野々村武文氏は、手引き改定への経緯について、こう説明する。この改定によって、従来は洪水、内水、高潮・津波に分かれていたハザードマップ作成の手引きが1つに統合された。

改定内容のポイントは第1に、市町村で「早期の立退き避難が必要な区域」を検討し、これを水害ハザードマップに明示するよう記載したことだ。第2に、地域によって発生する水害の要因やタイミング、頻度、組み合わせは多様であることから、市町村で事前に「地域における水害特性」等を十分に分析することを推奨した。第3に、住民目線となるよう、「災害発生前にしっかり勉強する場面」、「災害時に緊急的に確認する場面」を想定して水害ハザードマップを作成するよう記載した。

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り70%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。