魅力的な防災訓練のために

日常生活には、他に優先すべき事柄が満ちている。防災だけを声高に叫ばれても、すぐには取り組めない現実がある。防災活動が大切な人々を置き去りにしていないか。誰一人排除することのない防災訓練を企画する発想が求められる。

写真/イメージ(Wikimedia)

防災訓練は各地で熱心に行われている。ところが、防災訓練の内容がマンネリ化し、いつも同じ顔ぶれが参加するだけだと嘆く声も多い。大半の住民にとって、防災訓練が魅力のない行事になっている。魅力的な防災訓練を行うにはどうすればいいだろうか。

もちろん、防災訓練を魅力的にする工夫は、各地で試みられている。NPOや大学生の参加、地域の防災マップを作る活動にスマートフォンの地図アプリを活用する事例も見られる。実際、インターネットで、魅力ある防災訓練とか、楽しい防災訓練というキーワードを検索すれば、様々な事例が出てくる。魅力的な防災訓練を展開するには、こうした個々の事例を自らの地域に当てはめて考えてみることが最も効果的であろう。

そこで、本稿では、具体的な事例を紹介するのではなく、防災訓練を魅力的に展開する際に考えておきたいポイントを整理しておこう。

そもそも防災意識を高めれば良いか?

防災訓練では、災害に対する地域住民ひとりひとりの意識を高めて、地域で一丸となって災害に立ち向かうといった威勢のよい言葉が出てくる。しかし、冒頭に書いたように、防災訓練はマンネリ化しており、そもそも人々の防災意識を高めるにはどうすればよいかがわからないという言葉が続くのが現状である。

実は、これは問いが間違っている。人々の災害に対する意識は低いわけでは「ない」。

ちなみに、「今やるべきことを10項目挙げてください」と言われれば、おそらく、多くの人々のリストの中に、防災は含まれているに違いない。しかし、続いて、「では、その中でもっともすぐにやるべきことを1項目だけ挙げてください」と言われると、親の介護を挙げる人、店の支払いを挙げる人、受験勉強を挙げる人...という具合に実に多様な応えが返ってくる。

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