国民一人一人の意識変革

災害発生時において行政の救助、公的支援による生活再建に限界があることを踏まえ、災害への備えを「自分ごと」と捉え、国民一人一人が自ら行動するための契機を提示し、国民意識の転換を図ることが必要である。

内閣府 政策統括官(防災担当) 加藤久喜氏

【防災・減災に向けた国民の自助・共助】

昨年度、今年度の防災政策では、国民一人一人が防災の意識を高め、防災活動への自立的・積極的な参加を促すことが重点のひとつになっています。では、なぜ国民の自助・共助が必要なのでしょうか?

防災・減災には自助・共助が重要

自分の身は自分で守る

行政機関として、災害発生時に公助として最善を尽くすのは当然のことですが、それだけでは必ずしも十分とは言えません。まず、自らの命は、自らで守るという考えが大切です。

災害に対して、避難指示が出されますが、それはあくまでもエリア全体に出されるものです。個々人に対して出されるものではありません。

災害に対して、自分のこととして考えないと自分を守ることはできません。災害が発生したときの状況は、個々人によって異なります。

そのために自助が重要になります。

出典/ 防災と情報に関する世論調査(平成11年6月調査)
地震防災対策に関する特別世論調査(平成17年8月調査)
防災に関する特別世論調査(平成21年12月調査)
防災に関する世論調査(平成25年12月調査)

 

公的な援助は、すぐには届かない

また、被災地に支援物資が届くまでには一定の時間がかかります。そのため、支援物資が届くまでは、自助・共助が大切というわけです。

こうした自助・共助を重要視するようになったのは、やはり東日本大震災のときからでしょう。

災害への備えに十分取り組んでいるという人は3%

実際に防災に対する意識の調査結果を見ると、「大地震に備えて何らかの対策をとっている人」の割合は、東日本大震災前の平成11年(1999年)が66%に対して、平成17年(2005年)で70.3%、平成21年(2009年)で75.8%、東日本大震災後の平成25年(2013年)で89.2%と増えています(図1)。

とはいえ、平成28年の「災害への備えの重要度」の調査では、「優先して取り組む重要な事項であり、十分に取り組んでいる」という人は、わずかに3%。「災害に備えることは重要だと思うが、日常生活の中でできる範囲で取り組んでいる」という人でも34%。残り62%は、取り組んでいないという答えでした(図2)。

つまり、昔より意識は高まっているものの、自分の問題として、実際に準備している人はまだまだ少ないというのが現状です。

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