海外で食・農ベンチャーが成長 日本発、イノベーションの可能性

金融、コンサルを経て、農業ビジネスで起業したプラネット・テーブル、菊池紳CEO。食と農の最新ビジネスに精通する菊池CEOが、海外におけるベンチャーの動向、日本の課題とイノベーションの可能性を語る。

菊池 紳(プラネット・テーブル 代表取締役フード・イノベーション・イニシアチブ 代表理事)

今、食と農の領域で注目しているのは、流通のイノベーションです。構造的に発生する食料廃棄などの問題も含めて、食の流通全体をどう最適化するかが重要になっています。

世界で食料が届かない人がいるのは、生産物が足りないからでなく、流通に大きなゆがみがあるからです。生産者がつくる量や出荷のサイクルと、消費者が求める量やタイミングには、ズレがあります。かつて、それを調整するために中間流通業者や市場が生まれました。しかし、現在では、介在する中間業者が何段階にも増え、非効率性が増しています。

食の流通のイノベーションを目指して、海外でも、数多くのベンチャーが生まれています。たとえば、コロンビアのSokoText社。同社は、シンプルな仕組みで、流通の効率化を実現しました。たとえば、生産者が100の食料をつくっても、一人の消費者は1の食料しか欲しがらないとします。でも、消費者が100人集まれば、当然、100すべての食料が購入されます。少量で買いたい消費者を、適正な数で集めることができれば、無駄のない生産と消費のマッチングが実現するわけです。

SokoText社は、消費者と生産者をつなぎ、共同購入を可能にする新しい仕組みをつくり、流通の非効率性を解消しました。SokoText社のシステムはITに支えられており、同じようなビジネスは、日本にも登場する可能性があります。

問われるテクノロジーの意味

現在、世界的に見ると、農や食の領域のベンチャーにお金が集まりやすくなっています。ただし、今はマーケットをつくっているフェーズで、その真価が試されるのはこれからでしょう。アグテック(AgTech)、フードテック(Food Tech)と呼ばれるテクノロジー系のベンチャーも数多く現れていますが、テクノロジーありきで事業を考えても、成功するのは難しいと思います。一見、目新しいだけで、何のために必要なのかが見えないテクノロジーでは意味がありません。

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