知っておきたい デジタル化・ネットワーク化に合わせた法改正
新事業立ち上げ・起業時に知っておくべき「知財」の基礎知識を、知財啓発の第一人者である稲穂健市氏が解説する本連載。今回は時流の変化に対応する知財の最新動向を実例とともに紹介する。権利の保護対象の広がりは、ビジネスチャンスやブランディングの機会にもなる。
世の中の目まぐるしい変化に合わせて、知財に関する法制度の改正が何度も繰り返されてきました。商標法と意匠法については、従来と比較して保護対象が大きく拡大され、それまで明確な権利として主張できなかったものにも保護が及ぶようになりました。
色彩や音も保護対象:商標権
商標権の保護対象は、第1回(2021年3月号)でもご説明した通り、商品・サービスに付す文字・図形などの「商標」(営業標識)です。商標法で定義される商標は、もともとは、「文字商標」「図形商標」「記号商標」、およびこれらの「結合商標」のみでした。
1996(平成8)年の商標法改正で、これに「立体商標」(立体的な形状からなる商標)が加わりました。具体例としては、不二家のペコちゃん人形、ケンタッキーフライドチキン(KFC)のカーネル・サンダース像などが挙げられます。
さらに、2014(平成26)年の商標法改正で、「動き商標」「ホログラム商標」「色彩のみからなる商標」「音商標」「位置商標」も新たに認められるようになりました。
「色彩のみからなる商標」の登録例としては、トンボ鉛筆の「MONO消しゴム」で使われる色彩(商標登録第5930334号)、セブンイレブンの店舗などで使われる色彩(商標登録第5933289号)、三井住友フィナンシャルグループの店舗などで使われる色彩(商標登録第6021307号および第6021308号)など、計8件あります(図1)。登録数が少ないのは、色彩を「営業標識」として独占するためには、指定する商品・サービス(役務)について、「この色はあれ以外にあり得ない」と多くの人に認識されるレベルに達する必要があるからです。
図1 色彩のみからなる商標で登録されたもの(一部)
左から、トンボ鉛筆、セブン-イレブン・ジャパン、三井住友フィナンシャルグループ。指定商品・指定役務は、それぞれ、消しゴム、小売・卸売業務での顧客サービス等、金融関連のサービス等。色彩そのものをこれら3社が独占しているわけではない点に注意が必要
また、「音商標」については、大正製薬の「ファイトー、イッパーツ」(商標登録第5804565号)や、伊藤園の「おーいお茶」(商標登録第5805757号)など、人の声をもとにしたもののほか、大幸薬品の正露丸のテレビCMで流れるラッパのメロディ(商標登録第5985746号)や、インテル・コーポレーションのテレビCMで流れる「インテルはいってる」のメロディ(商標登録第5985747号)など、音のみからなる商標も登録されています。
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