シニア女性に人気のメディア 雑誌を起点に地域活性
シニア女性向け雑誌「ハルメク」を中心に読者との接点を掘り下げたビジネスを展開するハルメク。読者の高いロイヤリティを生かし、都市部の読者と地域とをつなぐ地域活性のプロジェクトにも注力する。旭川市と実施したまちの紹介・移住体験ツアーは、移住後をイメージできる点が高く評価された。
「50代からの女性の生き方を応援する企業」。ハルメクホールディングス法人営業部 部長の後藤昭人氏はハルメクをひとことでこう表現する。主力事業は「暮らしを楽しみ、生き方の幅を広げる」内容を扱う雑誌「ハルメク」の発行だ。読者には「育児が終了し、時間と資産に余裕があり、知識欲が旺盛な方が多い」という。定期購読のみの雑誌で、直近の販売部数は37.3万部。有料雑誌では2位の発行部数を誇る(日本ABC協会21年5月発表数字)。
雑誌と並行して、美容や健康、旅行などのテーマを扱う情報サイト「ハルメクWEB」も運営。そのほか通信販売、イベント・講座の企画・開催、また店舗も全国に5店展開し、読者と様々な接点をつくり、関係を深めている。さらに、ターゲットとするシニア女性が日常的にどのようなことに興味を持ち、また悩んでいるのか、インサイトを理解するためのシンクタンクを持っていることも特長だ。「調査結果に基づいて雑誌の特集を企画し、それを読者に寄り添いながら分かり易く伝えることで、読者の満足度を高めています」。
シニア女性のニーズを踏まえた
地域活性施策の立案
雑誌を中心に築いた読者との関係とネットワークを生かして、近年注力しているのが地域活性支援の取り組みだ。もともと旅行の企画・販売も手掛けており、松本市とのタイアップで白骨温泉のツアーを実施したこともあった。
「シニア女性がツアーに何を求めているのかというこれまでの蓄積データと、ハルメク読者のロイヤリティの高さを生かすことで、読者の行動変容までを促すことができる当社ならではの地域活性ツアーができるのではないか、と考えていました」と後藤氏。そこへタイミングよく舞い込んできたのが、旭川市から移住定住施策のサポートをしてほしいとの依頼だった。
ハルメク側が提案したのは、旭川市の紹介を行う東京でのイベントと、旭川市への移住体験ツアーの2つだ。2019年3月に都内で実施した「旭川と四季の暮らしイベント」には首都圏を中心に1都8県から53人が参加。旭川在住のガーデンデザイナー、上野砂由紀氏による旭川についての魅力についての講演や、旭川在住読者から旭川の住みやすさや暮らしやすさを伝えるビデオメッセージ放映のほか、地場産業である旭川家具の展示も行われた。
また、同年9月23日から26日までの4日間「ハルメク×旭川市特別ツアー・紅葉の大雪山とようこそ旭川」と銘打った移住体験ツアーを実施。10万円以上のツアー料金だったが、13人が参加した。上野氏が手掛ける上野ファームをはじめ旭川の観光名所はもちろんのこと、旭川在住読者の自宅も訪ね、実際の暮らしぶりにも触れられる内容とした。
こうした地方への移住定住支援プログラムの中に、ハルメクならではの読者ロイヤリティの高さを生かしたエッセンスを盛り込める点が、特徴であり最大の強みだ。
「移住定住を考える以前の問題として、知らない地域に対するイメージは漠然としていて、紋切り型のイメージを持っている人が多いため、いかにその地域の魅力を掘り起こして具体的に伝えられるかがカギです」と後藤氏。しかも誰がその魅力を伝えるかという点も大事なポイントだ。ハルメクでは、そこに雑誌の読者を登場させることで、地域の在住者と移住定住体験希望者の距離を近づけ、共感を持って受け入れられることを可能にしている。
例えば、実際のプログラムでは、イベント、ツアーを企画する際に、まず読者の中から協力者を募り、地元在住者だからこそ知る地域の魅力や住みやすさについて尋ねるアンケートを実施した。回答の中から、移住・定住を考えている人にとって響きそうな暮らし方、楽しみ方を実践している人をピックアップし、その様子を紹介する動画を制作。移住定住に重要な「実際に住んだら、どのような暮らしができるのか」を参加者に体感させるプログラムも盛り込んだ。旭川市の事例では、協力者となった地元読者の自宅の中まで案内してもらい、ありのままの生活を知ってもらう工夫を取り入れた。
「実際の暮らしぶりを見せてもらうことで、三重のサッシ窓があり真冬でも室内はいつも温かいことを実感していただくことができました。また旭川に長年住んでおられる方からは、羽田空港とを結ぶ便の多さでは旭川空港は国内有数で、しかも降雪地帯でありながら過去に欠航したことがほとんどないというお話も聞きました。参加者にとっては東京と行き来するうえで非常に便利な場所だということも新たな気づきになったようです」。
移住後の知り合いづくりに
読者ネットワークを活用
また、「移住を検討する際に現地で友達ができるのだろうかということも移住・定住を考える人にとっては気になるところです。ハルメクでは全国に多くの読者がいるので、そうした読者の方たちを巻き込むことができます。読者同士というだけで親近感がわくため、一気に心の距離を縮められる交流を促すことができます」と後藤氏は、ハルメクへの読者の信頼の高さとネットワークがあってこそできるプログラムが施策の後押しになると強調する。
実際に旭川のツアーに参加した人については、旭川に対するイメージが参加前の、「雪に覆われた寒い土地」というイメージから「緑が豊かで文化財も多く、美しいまち」に変わり、また行ってみたい、住みたい、という意見も見られた。
今後、ハルメクの地域活性へのかかわりについては、「地域の活動におけるシニアが果たす役割は大きいし、今後ますます重要になると思う。これまでは雑誌起点のみであったが、今ではWEBサイトを活用した情報発信も強化し、読者に対するアプローチも多様になった。したがって、そうした接点をうまく活用しながら、旭川市のような移住・定住促進のプロモーションに限ることなく、観光や物産、ふるさと納税など様々な領域のサポートしていきたい」と展望している。今後も、ハルメクの地域貢献プロジェクトに注目だ。
お問い合わせ
ハルメクホールディングス 法人営業部
TEL:03-3261-1041
MAIL:halmek_koukoku@halmek.co.jp
URL:https://halmek-holdings.co.jp/
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