2021年3月号

MPDの本棚

対話による「効果的な対立」がイノベーティブな組織を創る

月刊事業構想 編集部

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――本書では進化し続ける組織の条件を「経営陣がチームである」ことだと説いています。

経営陣がチームになっていないと、現場がチームになりません。私たちの調査では、事業部を管掌する役員が事業部を越えてコミュニケーションを交わしていると、現場の社員もコミュニケーションを交わす頻度が高くなるという相関がわかっています。また、経営陣間のコミュニケーション頻度が高い会社では、新たな創造に向けた動きが起こっているという相関もみられます。反面、リーダーシップは下のポジションに対して発揮する方が簡単です。役員同士という横の関係で互いにリーダーシップを発揮するには力が要ります。しかし、新規事業も本来は事業部の中だけではできないでしょう。社内の多様なリソースをどれだけ結集できるかが鍵になるはずで、そのためには経営陣がチームである必要があります。

――経営陣がチームとなるコミュニケーションのポイントを教えてください。

コミュニケーションはえてして自分の正当性を担保する方に向きやすく、「相手をもっと知る」「相手と一緒に何かをつくりあげる」という目的の認識が非常に重要です。しかし、コミュニケーションは半ば無意識に交わされることも多く、"何のためにコミュニケーションをとっているか"は、自己に深く問いかけないと認識するのは難しいのです。「このコミュニケーションの目的は何か?」と、常に自分に問うことは、チームとなるためのコミュニケーションを実践するために効果的なトレーニングになると思います。

――事業構想に挑む「チーム」に必要なコミュニケーションは何でしょうか。

新しくものを創り出すときには、"効果的な対立"が欠かせません。コミュニケーションの観点では"会話"と"対話"の2つがあります。"会話"は、共通の認識を探すことで信頼の醸成を試みる一方、"対話"は、お互いの違いを顕在化させます。「私はこう思う」「いや、私はこう思う」と意見を対立させることで刺激を受け、自らの考えがスパイラルアップする。いかに違いを恐れずに対話するかが、事業構想には非常に重要だと考えています。会話と対話の違いを認識し、「何のためにこの対話をしているのか」が意識できていれば、意見の違いや対立を恐れずにコミュニケーションを交わすことができるでしょう。

 

鈴木 義幸(すずき・よしゆき)
株式会社コーチ・エィ 代表取締役社長

 

『未来を共創する
経営チームをつくる』

  1. 鈴木 義幸 著
  2. 定価 本体1600円(+税)
  3. ディスカヴァー・トゥエンティワン
  4. 2020年12月刊

 

今月の注目の3冊

NO RULES

世界一「自由」な会社、NETFLIX

  1. リード・ヘイスティングス、エリン・メイヤー 著、土方奈美 訳
  2. 日経BP
  3. 本体2200円(+税)

 

コロナ禍の"巣ごもり"で動画配信サービスを利用している方も多いだろう。配信・サブスクリプションという先端的ビジネスで一躍成長企業となったNETFLIX(ネットフリックス)だが、その創業は1997年。DVDの郵送レンタルが祖業だ。本書では、ネットフリックス共同創業者のリード・ヘイスティングス氏による回顧と、経営学者のエリン・メイヤー氏による観察・分析のパートが交互に繰り返されることで、ネットフリックスの「自由」な企業文化が醸成されてきた軌跡が明らかになる。承認プロセスの全廃や社員の休暇日数を指定しないなど、斬新な施策が目を惹きがちだが、その目的は社員と組織のパフォーマンスを挙げることに絞られている。時代が変わっても、「事業は人なり」であることを実感させられる1冊だ。

 

オードリー・タン

デジタルとAIの未来を語る

  1. オードリー・タン 著
  2. プレジデント社
  3. 本体1800円(+税)

 

新型コロナウイルス感染症の封じ込めに世界で最も成功していると言われる台湾。その対応の立役者であるデジタル担当政務委員(閣僚)のオードリー・タン氏への20時間超のインタビューを通して、同氏が目指す未来社会の姿が語られる。今後、あらゆる領域でデジタル化が進行することは不可避だと多くの人が感じる一方、AIと人間の対立やプライバシー侵害の不安など懸念も多い。こうした懸念に対し、同氏は透明性を確保し包摂・寛容の精神を基礎に取り組みを進めることが重要だと強調する。終章では日本に向けたメッセージも発信。RESAS(地域経済分析システム)をヒントにした台湾版のシステムの存在なども紹介される。よりよい未来に向け、テクノロジーをいかに活用していくべきか、台湾の姿勢から学べる点は多い。

 

1日1話、読めば心が熱く
なる365人の仕事の教科書

  1. 藤尾 秀昭 監修
  2. 致知出版社
  3. 本体2350円(+税)

 

カリスマ経営者と名高い稲盛和夫氏や張富士夫氏、鈴木敏文氏らに加え、デザイナー・コシノジュンコ氏やプロ棋士・羽生善治氏、医学者・山中伸弥氏など、各界で活躍する第一人者たちが自身の挑む境地について語る1冊。同社による数々のインタビュー取材の蓄積をもとに編纂されており、ビジネス領域だけでなく、科学研究や文学、スポーツ、芸能まで幅広い分野でトップに上り詰めた人々の理念や哲学をうかがい知ることができる。卓越したプロフェッショナルたちの仕事観に触れることは、ビジネス感覚だけでなく人間力の涵養にも役立つだろう。

事業構想に挑戦する読者にとっては、構想を練り上げ、実現させていくなかで困難に接したとき、構想の原点にある情熱や志を呼び起こす助けにもなりそうだ。

 

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