ドラッグストア業界の覇権争い ウエルシアHDvsツルハHD
コロナ禍のなか、食料品までワンストップで購入できるドラッグストアは好調で、売上高上位10社がすべて増収となった。2019年度の売上高トップに返り咲いたウエルシアHDと、前年度トップのツルハHD、2社の現状と今後を見る。
新しい生活インフラとして存在感を増すドラッグストア
コロナ禍で日本経済が深甚な影響を受けるなか、業績を伸ばした業界もある。その一つがドラッグストア業界だ。マスクや体温計を求めて消費者がドラッグストアに殺到した光景は、まだ記憶に新しい。
そのドラッグストア業界では、2021年、マツモトキヨシHDとココカラファインの経営統合という大きな出来事が控える。2019年度、ドラッグストア業界の売上高ランキングは、前年度2位だったウエルシアHDが約8628億円でトップに返り咲き、トップだったツルハHDが約8410億円で2位となった。マツモトキヨシHDは約5960億円で5位、ココカラファインは約4039億円で7位だったが、この2社の統合で一兆円企業が誕生、業界地図は大きく塗り替えられることになる。
ドラッグストア業界は、繰り返されるM&Aによって成長してきた。現在トップのウエルシアは、2008年の寺島薬局子会社化を皮切りに、イレブン、ドラッグフジイなどを子会社化し、2014年にイオンによるTOBによって連結子会社となったあとも、HACドラッグなどを傘下に持っていたCFSコーポレーションなどを次々と子会社化、2020年も、よどややクスリのマルエを傘下に収めている。50%超の株式を握るイオンは、高齢化が進行する今後の中心的小売業態としてドラッグストアを位置づけており、マツキヨ/ココカラ連合誕生後、ウエルシアを中核とする再編を計画しているともいわれる。
一方、2018年度の売上トップだったツルハは、もともと北海道旭川市で創業、1990年代半ば以降、秋田県、岩手県、山形県などに進出してきた。2007年には千葉県のくすりの福太郎、2013年には和歌山県の上田薬局、広島県のハーティウォンツなどを子会社化、M&Aによって進出地域を拡大する、ドラッグストアの成長パターンの王道を歩んできた。地域での競争力が高い企業を次々と取り込み、地域の実状に合わせた店舗を運営する手法は、今後さらにパワーアップしそうだ。
店舗数が全国約5万6000店と、飽和状態を迎えたコンビニ業界は、店舗数拡大と画一的な店舗展開という、これまでの成長を支えたビジネスモデルが転換点に来ている。一方、ドラッグストア業界は、店舗数こそ約2万1000店とコンビニには及ばないものの、今や生鮮品も手がけ、調剤から日常の買い物までワンストップで済む、高い利便性を誇る。コンビニにはない強みを武器に、ドラッグストアの存在感は今後ますます大きくなり、健康、安心・安全という、これからの重要テーマに直結した、コンビニとはまた異なる生活インフラとして機能することが期待される。まだまだ再編が続きそうな今後のドラッグストア業界の動向から目が離せない。
両社概要
ウエルシアHD
創業 | 2008年 |
---|---|
本社 | 東京都千代田区 |
代表 | 松本 忠久(代表取締役社長) |
資本金 | 77億3,600万円 |
従業員数 | 9, 882名 |
事業内容 | 調剤併設型ドラッグストアチェーンを運営する 子会社/グループ会社の経営管理 |
グループ企業 | ウエルシア薬局、シミズ薬品、 丸大サクラヰ薬局、金光薬品、よどや、 クスリのマルエ、ネオファルマー、MASAYA、 ウエルシア介護サービス、ウエルシアオアシス、 ウエルシアリテールソリューション 他 |
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