2020年12月号
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知が創る未来ビジネス

一流企業でなぜイノベーションが起きないか 革新を阻む壁の正体

早川 典重(事業構想大学院大学 特任教授)

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イノベーションは何故すべての産業で必要なのか。そして、一流と呼ばれる企業では、何故イノベーションは起き難いのか。権威、慣習、組織などの課題を乗り越えて、企業の中でイノベーションを起こすための方法や経営トップの役割について考察する。

台風10号が通過中の屋久島で、停電の中、原稿を書いています。ローソクの明かりで過ごしていると、江戸時代の人も寝る前に本を読むのは大変だったろうと思う一方で、さぞかし生活は静かであっただろうとも思うのです。電気が初めて世の中に出たときに、便利と思う人もいれば、不便と思う人もいたのでしょう。そもそも、イノベーションは、なぜ必要なのでしょうか?何故、今、イノベーションがこれほどまでに注目されているのでしょうか?

世界のデータ量は2019年の45ゼタバイトから2025年には175ゼタバイトまで増えると予想される

出典:Data Age 2025, sponsored by Seagate with data from IDC Global DataSphere, May 2020

テクノロジーの急速な発展で
すべての産業に変革が必要に

現代社会では、情報が溢れています。その情報量は、毎年幾何級数的に増加しています。現在の私たちの1日に接する情報量は、平安時代の人達の一生分、江戸時代の人達の一年分とも言われています。データの90%は直近の2年間で生まれると言われる、大量のデータに囲まれている時代に生きているわけです。

元来、経済成長は、人口の増加と技術革新によってなされます。人が増えれば、それだけ生産も消費も増えますし、技術革新によって一人あたりの生産性も高まります。しかし、ある時期からテクノロジーの発展のスピードが早まり、非連続でパラダイムシフト的な展開を遂げる様になります。コンピューターの登場です。技術革新は、労働からの開放を促し、機械やロボットが人にとって変わりました。そして、大量の情報とその処理に、人が追いつけなくなり、知的作業や頭脳の一部までをコンピューターやAIにとって変わられる時代となってきました。人類の進化の度合と速度がコンピューターやAI、更にはロボットやマシンにより拍車がかかり、社会の変化のスピードも加速していきます。人に合わせて、社会が変化するのではなく、テクノロジーに合わせて社会が変化し、人間自身がテクノロジーに合わせて変化しなくてはならない時代になっているわけです。

そんな中で、企業にとっても、変化は必須となり、社会の変化のスピードとインパクトよりも自ら起こす変革や革新が速く大きければ勝ち組となり、逆に変革を起せなければ社会から取り残されることになります。それは先端産業だけでなく、従来変革と無縁のあらゆる産業で、変革、即ちイノベーションの需要が高まってきているのです。不動産や交通はAIによるシェアリングに、金融はFintechによるP2Pへ、製造業はロボットやAIによる需要予測に基づくオートメーションへ、小売はe-commerceへとすべての産業が革新を求められています。

一流企業が抱える
権威、慣習、組織、人材の課題

20世紀の成功のレガシーに乗っかって、生き残っているリーディングカンパニーと呼ばれる会社も例外ではありません。CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)を設立したり、イノベーションの組織を作ったりとマスコミに取り上げられますが、小さな成功談は時折見かけるのに、大成功したと言う話はあまり耳にすることがありません。

前号で、「イノベーションから最も遠いもの」との質問には、「権威」、「慣習」、「硬直化」、「組織」などの意見を耳にすると書きました。多くの企業でイノベーションの組織を任される人は、社内での成功者であることが多く、別の視点で見ると、権威と慣習と組織での体現者であるとも言えます。更に、イノベーションのための投資の審査や許可を出す人も、イノベーションとは一番遠いところにいる人が担当をしていることが多く、本来その案件が持っている可能性や将来性を見ることなく、リスクと蓋然性ばかりを追求した結果、イノベーティブなとんがった案件が味のない平凡な案件と化してしまうか、もしくは、案件自体が潰されるだけでなく、案件が潰れる事で社内での画一的な評価にさらされてイノベーティブな人材の才能までをも潰していることが多々あるのです。

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