2020年10月号
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パイオニアの突破力

短歌をもっと身近な文化に ジャンルを超えて軽やかに挑戦

野口 あや子(歌人・作家)

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今年7月に発売された歌集『ホスト万葉集』。コロナ禍で注目を浴びることになった歌舞伎町のホストたち76名が夢と現実、愛や欲望を自由に歌った短歌をまとめた話題の1冊だ。その選者のひとりでもある歌人・野口あや子。2010年に第54回現代歌人協会賞を史上最年少の23歳で受賞して以来、短歌を軸に“表現”の世界を疾走し続けている。

文・油井なおみ

 

野口 あや子(歌人・作家)

幼い頃から生きる道を問い続け
見つけた表現者として生きる道

繊細にして大胆、純粋であり官能的。

十代にして短歌の世界で早熟な才能を開花させた野口あや子。

野口が紡ぐ五・七・五・七・七の三十一文字には、生き様そのものが映し出され、濃密な情景に満ち溢れている。

高校在学中から数々の賞を受賞し、今年、デビューから14年。野口の短歌との出会いは非常にユニークである。

「小さい頃から集団に馴染めなくて、小学生の頃から不登校だったんです。でも、図書館に通うのは好きで。小学校高学年の頃、本当は少女漫画や恋愛漫画を読みたかったんですが、教師である両親から漫画を禁止されていたので、代わりに『源氏物語』を借りて読むようになったんです。はまりましたね。物語中、登場人物たちが歌を詠み合うじゃないですか。それで自然に、短歌という文化も自分の中に入ってきたんです」

小学生だった当時から、自分と向き合わざるを得なかったという野口。

「集団に馴染めない、学校に行っていないという分、自分の個性をどう認めていけばいいのか悩んでいて。自分はこれからどうやって生きていけばいいんだということを常々考えていかなければならなかったんです。そんな中で源氏物語の女性たちの姿を見て、いろんな個性や生き方があっていいんだ、と思えるようにもなりました」

しかし、野口曰く、「思春期の悩みから」、14歳から15歳までの1年間、摂食障害で入院。完治するまでに10年ほどかかった。

「すごく痩せると、長文や難しい文章が読めなくなり、計算もできなくなるんです。入院中は、家にあった『サラダ記念日』を読んだり、ひたすらJ-popの歌詞を聞きながら過ごしました。当時は、安室奈美恵、宇多田ヒカル、浜崎あゆみが全盛期。まだ若い彼女たちが自分の思いをそのまま書いて歌っている姿や、俵万智さんの短歌の世界、そして、源氏物語の中で男女がコミュニケーションツールとして和歌を交わしていたことが、すべて自分の中で繋がっていったんです。じゃあ、自分も書いていいのかなと思い、独学で短歌を始めました」

手芸などのもの作りや、表現することは幼い頃から好きだった。日記や詩も物心ついた頃から書いていたという。

「思春期にはよくあることだと思いますが、詩だと悩みなどを延々と書き続けてしまうんです。それが短歌は結句をつけなければいけないので、悩んでいることが一旦完結するというか、形になる。自分の気持ちに折り合いをつけるためにも、結句があったほうが楽で、自分には合っていたんですよね」

そして、高校在学中の2006年、第49回短歌研究新人賞を受賞する。岐阜の短歌結社に入会してから3年目のことだった。

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