「コスト管理」から目指す企業成長

――読者対象はどのような方ですか。

大企業の経営管理担当役員、コスト管掌役員、COO、調達管掌役員などです。

――本書では成長とイノベーションのために"コスト"に着目しています。従来の企業経営における"コスト管理"と異なる点は何でしょうか。

ゼロベースのアプローチはコスト=経営資源と捉え、経営者が何にいくら使うかを判断し、戦略投資に必要な軍資金を積み上げます。

これは日本企業の歴代の名経営者が感覚的に行ってきたことを「仕組み化」したものです。大企業では名経営者の薫陶を受けた世代が現場から離れ、一方で中途採用では価値観が多様な人材の比率が高まっています。こうした企業においては"センスや良識の共有"から離れ、仕組み化したコストマネジメントの採用が持続可能な成長に必須です。

――本書の重要なキーワード"ゼロベース"は、歴史や基盤のある企業ほど難しい発想であるとも言えます。本書で取り上げられた事例から、実践のヒントをお教えください。

複数の役員がゼロベースでコストを見直すことについて、深い理解と合意を作り、社内上層部に意識的に「見せる・伝える」ことで成功しているケースが多いです。「上司のためにコストの『聖域』を守るのが仕事だ」という暗黙の認識から解き放たれたとき、担当者は忖度をやめ、これまで諦めていたスマートなコストの使い方や仕事のやり方を提案するようになります。また、一見矛盾するようですが業績が低迷しきった事業部よりも、業績がよい事業部で「荒天準備」と位置づけて見直しを図ったほうが痛みも少なく前向きな議論ができます。ここで成功事例を作り水平展開する方法も有効です。

――日本語版では日本企業に向けた内容が追加されています。コストの観点からみた日本企業の伸びしろはどこにあるでしょうか。

近年では戦略的なM&Aを行いながらグローバル競争に打って出る企業が増えています。ただ、M&A後に財務的に息切れしては勝てるポジションに到達しません。間髪入れずコストマネジメントを行い、対象会社のバリューアップから連続的M&Aを狙う。この一連の作業を仕組み・定型化し実行速度を上げることができれば、もともとイノベーティブな技術と製品の基礎力が高い日本企業はグローバル競争を勝ち抜く可能性が大きく広がります。

 

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