2020年2月号
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知が創る未来ビジネス

アシックス「オニツカタイガー」 ブランド・知財戦略が経営のコア

早川 典重(事業構想大学院大学 特任教授)

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海外でも高い評価を得ているアシックスのブランド「オニツカタイガー」。同社は、ブランドの価値の最大化を重要な経営課題として認識し、数々の施策を進めている。オニツカタイガーの事例を通して、経営としての知財戦略について考える。

私は海外出張の際、飛行機に乗って到着するまでの間、映画を見るのをいつも楽しみにしています。映画の前に最初に現れる印象的な映像が「Onitsuka Tiger」です。アバンギャルドなファションの若いモデルが登場し、途中、シューズに一部スポットを当てますが、オニツカタイガーのことを知らない人はファッションブランドのイメージCMと思われるに違いありません。

アシックスは日本を代表するスポーツシューズ・ウエアの会社ですが、実は日本より海外で名が通っていることを、案外日本人の私たちは知りません。4000億円近くの売上の80%を海外で稼ぐアシックス、その中でも異彩を放ちラグジュアリーブランドを目指すオニツカタイガーの経営としての知財のお話を、オニツカタイガーカンパニー長の庄田良二さんから伺いました。

庄田 良二(株式会社アシックス 取締役常務執行役員 オニツカタイガーカンパニー長)

スポーツシューズではなく
ファッションブランドの会社

庄田さんは海外ラグジュアリーブランドでの豊富な経験を買われ、2011年からアシックスに入られて、オニツカタイガーをグローバルなブランドに育てる一翼を担われてきました。

お話の最初に語られたのは、オニツカタイガーはファッションブランドの会社であり、スポーツシューズの会社では無いとのこと。よって、ブランドエクイティーをいかに高めるかが経営として重要になってくるとのこと。

マーケティングの手法としてモノをたくさん売るためにブランドを語る方はたくさんおられますが、ブランドエクイティーを高めることが経営課題と認識されている経営者の方はまだ少ないのが実態です。特に、日本のメーカーの経営に携わられる方は良いものづくりに拘りますが、会社の知財の総体であるブランドエクイティーが最も大切な経営指標の一つであると意識して考えられている方は、とても稀有な存在なのです。

従来のプロダクトアウトは言わずもがなですが、ニーズ志向のものづくりでは既に成り立たなくなってきている世界の中で、庄田さんは「ニーズと高い技術力に基づき機能を満たすのは当たり前で、その上で歴史、信用(品質)、デザインに加えて、いかにお客様の期待を裏切るかが重要」と語られます。

真のお客様第一主義、クライアントファーストとは、単にお客様の要望を聞くのでは無くて、良い意味でお客様の発想を超えた、お客様の期待を超えた本人すら気づいていない価値を提案することなのです。そしてそのためには、(製造工程においての効率は別として)効率をあえて求めないと言われます。無駄と思われるものの中から満足が生み出されてくるのです。すなわち、効率第一主義からは、お客様の期待を超えた提案、wantsは生まれないということです。

多くの経営者が効率とコストダウンを目指す中で、あえて無駄と思われるものであってもお客様のwantsを刺激するものを創り出すことで、お客様はそれに値する対価を喜んで払ってくれる良い循環が生まれます。高コストですが、しかしその結果、利益の最大化を図ることができるのです。

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