2020年1月号
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知が創る未来ビジネス

知財の情報は未来を示す 知的資産を分析し、ロジカルに戦略立案を

早川 典重(事業構想大学院大学 特任教授)

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財務諸表が、基本的に過去の実績を示す情報であるのに対して、「見えない資産」である知財の情報には、未来に起こる可能性が多く含まれる。今回は、知財、知財権、知的資産と、それらを活用した戦略立案について解説する。

知財とはワインのようなもの?

知財というと、特許を思い浮かべる人が多く、私も当初は知財≒特許≒訴訟のようなイメージを持っていました。今では、私は知財をイメージする際にワインを思い浮かべます。

皆さんも、ワインボトルを思い浮かべて頂くと良いのですが、ほとんどのワインボトルには、ラベルが貼ってありますね。このラベルには、どこでいつ作られて、どのようなグレードなのかが記されています。また、作り手のトレードマークや特徴のあるデザインも描かれているものが多いと思います。

しかし、最も重要なのは、中身のワインそのものであることは言うまでもありません。ワインそのものが技術やknow-how、デザインであり、ラベルに書かれている証明書の部分が特許権、そこに商標権や意匠権として付いているわけです。

すなわち、技術・know-howのようなトレードシークレット(営業秘密)と呼ばれる知財、そして特許・実用新案・商標・意匠・著作権のように登録され権利化されているものが知財権となるわけです。たまに、ラベルも何も貼っていないのに滅茶苦茶美味しいワインに出くわすことがあります。これは、技術・know-howの知財は優れているけれど、権利化はされていないと言うことになります。

まずは、自分の会社・事業の
知的資産を把握することが大事

知財(権を含む)というと、大きく分けて次の5つをイメージすると良いでしょう。トレードマーク(商標権)、コピーライト(著作権)、デザイン(意匠権)、トレードシークレット(営業秘密)、パテント(特許権)。

現在では、上記に加えてインターネットのドメインやFacebook、Line等SNSのアカウントも重要な知財(権)となります。これらのすべてを合せた総体が知的資産となるわけです。そして、これらの知的資産をうまく組み合わせながら最大限活用し、企業価値を最大化することが、経営のための知財戦略となります。

従来の経営であれば、ROA(総資産利益率)というと、お金、在庫等の資産の回転率を上げて売上や収益につなげ、株価を上げることでした。第1回でもお伝えしましたが、S&P500社のデータから分かるように、時価総額のうち見える資産の割合は15%を切っており、見えない資産が85%以上を占めていますから、経営者としてはこの見えない資産をいかに活用するかが最大の経営課題になるはずです。

我々が第1にやらなければならないことは、自分の会社や事業が、一体どのような知的資産を持っているかを客観的に知ることです。そして、次に競合がどのような知的資産を保有しており、市場がどのような状況なのかを分析して、自社の立ち位置を正確に知の面から認識することです。

孫子に「彼れを知りて己れを知れば、百戦して殆うからず。彼れを知らずして己れを知れば、一勝一負す。彼れを知らず己れを知らざれば、戦う毎に必ず殆うし。」とあります。まずは己れを知る必要があるのですが、案外自社の知的資産がどうなっているかを科学的に分析し、把握している経営者の方はとても少ないと思います。特に業務範囲が広く、研究開発による特許を多数持っている企業は、特許の藪という状況に陥っていることがあります。

図の資料を見てください。これは、「事業将来性(科研費・グラント配賦総額)」と「事業競争力(自社相対的知財排他力)」の視点から特許を分析し、データに基づいて知財をいかに活用すべきかの戦略立案を、アスタミューゼ社が行った参考資料です。競争力が高く、将来性も高い分野には、研究開発投資や他社技術の取得によってポートフォリオの強化を図り、逆に競争力が低く将来性もあまり高くない分野は、知財のライセンス提供・売却、部門のカーブアウト(外部への切り離し)、廃棄・撤退という方針を出さなければいけないのかもしれません。

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