企業内大学対決 LIFULL vs. ジュピターテレコム

受動的な研修ではなく、社員が自分の目標やキャリアアップのために部門を超えてさまざまな講座を受講できる「企業内大学」を設ける企業も増えてきた。いずれも急成長を続けるLIFULL、ジュピターテレコム、2社の取り組みを見る。

社員の自主性を育む2つの企業内大学

少子高齢化や労働人口の減少、国の「働き方改革」の進展、さらにはダイバーシティやワークライフバランスへの関心の高まりなどを背景に、企業の人材育成のあり方が見直されている。人材獲得競争が激化し、大量に採用して有望な人材を選抜・育成することが難しくなっているなか、企業内のモチベーションを高めて個々の才能や関心を引き出し、伸ばしていくための「企業内大学」に力を入れる企業も増えている。

住宅情報サイトなどを展開するLIFULLもその一つ。「日本一働きたい会社」を理念に、「あふれる挑戦の機会の中で成長し続ける集団」を目指す同社は、2009年に、その挑戦の機会の一つとして「LIFULL大学」を設立した。「必須プログラム」の他、マネジメントスキルが学べる「選択プログラム」、次世代のリーダー候補を養成する「選抜プログラム」から構成され、選択プログラムでは基本的に社員が講師となって、職種や部門を超えて教え合う。

同社では、内定者も含めて誰もが新規事業を提案できる「SWITCH」という制度も設けており、高齢者施設情報などを提供するサイト「LIFULL介護」など、この制度から生まれたサービスも多い。さらに、日進月歩のICT技術にキャッチアップするために、業務時間の10%を合宿形式の研究開発に充てられる「クリエイターの日」も設けている。「日本一働きたい会社」を目指すこうした取り組みの結果、LIFULLは2017年の「社員モチベーションが高い企業」で283社中1位となった。

一方、ケーブルテレビ事業などを手がけるジュピターテレコムでは、強制的で画一的な研修によって、ともすると社員が受動的になってしまうという課題を克服し、自主的な学びを促すために企業内大学を設けた。2017年に設立された「J:COMユニバーシティ」では、必修科目の他に、部門にかかわりなく自由に選べる科目を数多く用意した上で、他部門の業務について学ぶ機会も設け、社員が会社全体を見る大局観を養えるよう配慮している。

講師に経験豊かな定年再雇用者を立てている点もユニークで、蓄積されたノウハウを継承できるだけでなく、外部講師では不可能な、リアルで熱情と愛情のこもった講義ができる。同社は、経営方針を社員でアイデアを出し合いながらまとめるなど、全員で会社を作る企業風土を築いてきたが、研修体制でも内製ならではのメリットを追求しているようだ。

両社に共通するのは、社員を講師として社員同士が教え合う手法だ。育成の負担を軽減できるる効果もさることながら、社内の一体感を醸成し、組織力や結束を高める効果が期待できる。教えられた側が教える側に回る、という好循環によって社員個々の自主性が育まれ、実効性のある、血の通った学びの機会となる。お仕着せの研修ではなく、社員が積極的に関わることができる研修によって人材活性化を図る。企業内大学の意義は、そこにありそうだ。

両社概要

LIFULL

設立 1997年(創業1566年)
本社 東京都千代田区
代表 井上 高志(代表取締役社長)
資本金 97.2億円
従業員数 1, 547名
事業内容 ●不動産・住宅情報サービス
●花の定期便サービス など
関係会社 Trovit Search. S. L.
Mitula Group Limited
LIFULL Marketing など13社

出典:同社ホームページ他

 

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