2019年12月号
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パイオニアの突破力

男子シンクロの先駆者 世界大会でメダル、シルク・ドゥ・ソレイユ挑戦

安部 篤史(アーティスティックスイミング・ミックスデュエット 銅メダリスト)

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2015年の世界水泳で初めてシンクロナイズドスイミングの男子競技が正式競技に認定されて以来、日本でも男子の競技人口が着実に増加。若い選手たちの活躍が目覚ましい。それ以前の道なき道を切り拓いた先駆者が、安部篤史だ。競技の華やかさとは裏腹に、挫折を繰り返しながらも今もその最前線を走り続ける。

文・油井なおみ

 

安部 篤史(アーティスティックスイミング・ミックスデュエット 銅メダリスト)

競泳から逃げ出し見つけた
男子シンクロの世界

迷いなく、まっすぐに夢を実現した者よりも、夢を持って傷つき、自分にその器はない、と心折れた経験を持つ者の方が多いのではないだろうか。

安部もまたその後者であったという。

3歳から水泳を始め、中学生まで競泳のエリートだった安部は、高校は競泳強豪校へ推薦で入学した。

「水泳の特待生だったので、誰よりも結果を出さなければいけないのに、記録が伸びなくて。自分だけインターハイに出られなかったりしたんです。焦りと同時に、次第にモチベーションも維持できなくなってしまいました」

結局、高校3年生で部活を引退すると同時に、競技者からも引退。新たな道を見つけるべく、大学に進学した。

ところが、重圧から解き放たれホッとしたのも束の間。競泳に打ち込んだ濃密な時間を何にあてて過ごせばよいのかわからず、持て余す日々が続いた。

そんなときに出会ったのが、映画『ウォーターボーイズ』。10回近くも劇場に足を運んだという。

「競泳ひと筋で、シンクロナイズドスイミング('17年からはアーティスティックスイミング)という競技自体、観たことがなかったんです。水泳は個人競技。そう思っていたのに、映画の中の高校生たちは、シンクロ未経験ながら、文化祭で発表するという目的に向かって励まし合い、時にぶつかり合いながら、一致団結して突き進んでいたんです。文化祭での公演後、彼らが手をつないで観客に挨拶するシーンにスカッとしたんですが、これって、辛いことも良いことも、応援されたこともされなかったこともみんなで乗り越えてこその達成感なんだなと思ったんです。私自身、競泳でそんな団結力や達成感を感じたことはありませんでした。自分も絶対に経験したい、と心底思いました。生まれて初めて自分で見つけた“やりたいこと”だったんです」

作品のホームページに映画の感想を書き込むBBSを見つけた安部は、早速、熱い思いを書き込んだ。するとそこに見知らぬ女性が「ウォーターボーイズを演出した会社が新人募集してますよ」とレスをつけてくれた。

そこで“トゥリトネス”という団体を知り、大学生ながら入団を決意。そこから導かれるように、ドラマ版『ウォーターボーイズ』への出演も決まった。

「撮影に際して5か月間、シンクロの合宿がありました。泳げないメンバーもいましたし、基礎から固め、技を完成していったんです。あの団結力や達成感は、まさに自分が経験したかったこと。今も自分の原点。色あせないですね」

やりたい気持ちに相反する
人見知りの大きな壁

「ウォーターボーイズになる」という最初の夢を実現した安部だったが、順風満帆だったわけではない。トゥリトネスの入団には、思わぬ壁があった。

「やりたいという思いだけで突っ走っていましたが、自分は幼少期からずっとシャイで、震えるくらい人前が苦手だったんです。トゥリトネスのメンバーだけの練習時でさえ、真っ青になって下を向くだけ。これではお客様の前では何もできないな、自分は適性がないんだと思うようになりました」

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