2019年9月号
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知が創る未来ビジネス

知財戦略とは「特許の活用」ではなく「知を生かす経営戦略」

早川 典重(事業構想大学院大学 特任教授)

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知財戦略とは特許の活用を考えることではなく、経営戦略に位置づけるべきもの。しかし、知財戦略において、日本企業の多くは世界に遅れをとっている。本連載は、企業が持つ「知の資産」を経営戦略に活かすための視点、方策について考察する。

日本は世界的な特許大国

みなさんは、知財と言う言葉から何を思い浮かべるでしょうか? 多くの人が自然と特許を思い浮かべると思います。私も知財事業に関わるまでは、同じように特許のことを思い浮かべていました。更に、訴訟とかパテントマフィアなどのマイナスのイメージを描いていました。

私は、前職の三井物産でパナソニックと三井物産のアライアンス構築の責任者をしており、毎週のように新たな事業提案をしていたのですが、発想が豊富な室員からパナソニックの知財の活用の提案がありました。2013年当時は、パナソニックは特許出願・保有の世界最大の会社の一つであり、それを活かさない手はないとの発想でした。

聞いた当初は、知財というと訴訟のイメージが強く積極的ではなかったものの、調べれば調べるほど、日本が保有する膨大な特許を活用しない手はないとの思いに至りました。当時、特許保有価値のランキングで、日本の企業が世界のトップ10に3社、トップ20に6社も入っていたのですから(図表1参照)。日本は、世界の特許大国だったのです。

図表1 2013年の特許国際出願件数


(速報値、順位のカッコ内は前年)

出典:世界知的所有権機関(WIPO)

 

知財を保有するだけでは
何も生み出さない

ところで、ここで少し想像してみて欲しいのですが、もし、皆さんが銀座四丁目の交差点に位置する三越や和光の周辺に土地を持っており、その場所が草ボウボウの空き地だったらどうするでしょうか?(図表2参照)

図表2 「見えない資産」の重要性


 

そのままにしておけば、莫大な固定資産税を毎年支払わなければいけません。きっと何らかのビルを建てることになるのでしょう。まず、自社で使うことを考えて、自社で使用しないのであれば、人に貸して賃貸収入を得ようとするのではないでしょうか? 若しくは、土地ごと売却という手段もあるかもしれません。さもなければ、一等地なのに、高額の固定資産税を支払い続けるだけで、収入がない勿体無い資産となります。

特許も同様で、自分で使ってもいない銀座の一等地に相当する素晴らしい特許をいくら保有していても、毎年維持するための特許年金がかかり何も生み出しません。使っていない特許は、ライセンスや売却を通して収入を得て、その収入をもとに更なる研究開発をすべきではないでしょうか?

そのような考えの下で、パナソニックの経営企画に相談したのですが、回答は、自社の知財を他社にライセンスしたり売却したりして儲けるのはものづくりの本業ではなく、会社の基本哲学に沿わず論外であるという反応でした。これはパナソニックに限らず、当時、有力な技術を保有されている多くのメーカーも同様な考えだったと思います。

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