シリコンバレーと新潟・燕三条 新産業が創出される地域の共通点

なぜ、特定の地域でのみ、イノベーションが集中して起きるのか。シリコンバレーと新潟・燕三条の事例をもとに、同一の産業クラスター内において、新産業が持続的に生み出されるメカニズムを分析する。

特定地域に特定産業がなぜ集積するのかを説いたのは、アルフレド・マーシャル(1920、 Principle of Economic、経済学原理)である。シリコンバレーをはじめとして、イノベーションは特定の産業クラスターで持続的に起こることが多い。ここでは、日本の例として、燕三条を取り上げる。燕三条の400年の歴史をたどり、イノベーションの起源を観察したい。

結論から言えば、400年もの長期にわたり産業集積が持続している最大の理由は、新産業が常に創出されているからである。

シリコンバレーにおける
産業変遷の歴史

サンフランシスコの南の郊外にある シリコンバレーは、戦前は果樹園が主であった。筆者が住んでいた1970年代終わりから80年代にかけては、果樹園の面影を残す場所はいくつか残っていた。

シリコンバレーの産業構造の変遷を見ると、かつては軍事産業を中心とした企業の集積があった(表1参照)。1939年にヒューレットとパッカードによって設立されたHP(ヒューレット・パッカード)は、当時はレーダーを製造していた。シリコンバレーが誕生した場所として、スタンフォード大学があるパロアルトの街には現在、パッカードの親の自宅のガレージが記念碑とともに保存されている。

表1  シリコンバレーの産業構造の変化

出典:著者作成

 

その後、ノーベル物理学賞を受賞するウイリアム・ショックレーによる、半導体の開発研究所がパロアルトに隣接するマウンテンビューに設立された。そして、半導体の原料であるケイ素の英語がSiliconなので、一連の地域はシリコンバレーと呼ばれるようになった。

シリコンバレーの産業変遷は、第1期は軍事産業、第2期は集積回路、第3期はパソコン、第4期はインターネットというように、主要産業が大きく4回も入れ替わっている。そして、新たな産業は、その前の産業とも深く関連していることが理解できる。

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