GDP至上主義からの脱却 ノーベル経済学賞に見る世界の潮流

経済指標として知られる国内総生産(GDP)には、持続可能性に配慮した取り組みが反映されない。このような課題を背景に新しく生まれた「新国富指標」が注目を集めている。

2018年のノーベル経済学賞は、「環境経済学」の権威であるウィリアム・ノードハウス教授と、イノベーション(技術革新)と経済成長の関係を研究し「内生的経済成長モデル」を構築したポール・ローマー教授が受賞した。受賞の理由は、気候変動や技術革新と経済成長の関係を定式化したことだ。

経済学の社会への最大の貢献の一つが、経済の活性度合いを測るGDPである。しかし、経済成長は光だけでなく、影の部分もある。ノーベル経済学賞を受賞した両者の研究は、日本がこれから本腰を据えて取り組まなければならない、持続可能で長期的な経済成長に示唆を与えるものであり、世界的に"持続可能性"への注目が高まっていることを示している。

持続可能で長期的な経済成長という意味では、昨今SDGs(SustainableDevelopment Goals:持続可能な開発目標)が国、自治体、企業を問わず高い関心を集めている。しかし、いざSDGsを推進しようと思っても、悩ましい問題に直面する。それは、指標だ。指標がなければ、現在の取り組みが良いのか悪いのか判断できない。これに対して、国連「新国富報告書」の代表を務めた九州大学馬奈木俊介主幹教授は次のように説明する。

「国や自治体、企業が新しい技術・政策を導入すると、社会が変わり、新しい社会になります。社会が複雑化している中で、単一の指標を見ただけでは良し悪しは判断できません。様々な指標がある中で総合評価をどうするか。『新国富指標』はその総合評価を表したものです。日本でも、福岡県久山町や福井県などで既に導入が始まっています」

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