9割が「魅力的」と高評価 「奈良ガイドボット」実証実験

外国人観光客が劇的に増加している古都・奈良。玄関口となる近鉄奈良駅で昨夏、AIを用いた観光案内サービスの実証実験が行われた。鉄道会社が描く今後の構想とは。

伊東 剛志(近畿日本鉄道株式会社 総合企画本部総合研究所主任研究員)

激増した訪日客の今後を見据える

近畿日本鉄道(以下、近鉄)は、奈良・大阪・京都、三重の伊勢や名古屋までを結ぶ、私鉄最長の路線網を持つ。訪日客の利用数は2015年度の310万人から2017年度は470万人(数字は推計)と右肩上がりで増加。その中で奈良県への訪問者数の伸びが際立っているという。

このような状況のなか、近鉄は近鉄奈良駅や主要駅に多言語対応可能な駅コンシェルジュを配置するなど対応してきたが、人員を配置できない夜間早朝を含めたサービス強化が課題に。そこで乗り出したのが、複数のAIを組み合わせた観光案内サービスの開発だ。

言語に依存しない直感的な観光案内

「今後の鉄道会社に不可欠なのは、言語や年齢に依存しないシームレスな案内サービスの構築です。直感的にわかりやすく使いやすいサービスは、重要なコミュニケーションツールになります」というのは、近鉄総合企画本部総合研究所主任研究員の伊東剛志氏だ。

今回、近鉄の課題に応えたのが、技術マッチングと企画を提案したNTT西日本と、画像認識技術を提供したNTTだ。会話感覚でやりとりができるAIチャットボット「Repl-AI(レプル・エーアイ)※」で画像認識画面へ誘導、言葉に依存せずルート案内が始まるよう2段階の仕組みを構築した。

QRコードからAIチャットボットへスムーズに移行する

利用してもらう数々の工夫

実証実験は2018年7月に実施。英語・中国語の表示言語を用意し、1日約150人に参加してもらいアンケートを得た。エンドユーザーの反応は上々で、約9割が「魅力的」であると回答。「特に高精度の画像認識にはおどろかれたようです。メンテナンス面でも大量の画像を記憶させる必要がなく、すばらしい技術」と伊東氏も期待を寄せる。「奈良以外、観光地以外でも使いたい」「飲食店や物販の紹介もしてほしい」という声も多かったという。

実験にあたっては、スマートフォンのアプリではなく、ブラウザで操作できるということにこだわった。アプリだと周知はできてもダウンロードしてもらえないことが多い。まず使ってもらうために、QRコードからAIチャットボットへの誘導は有効だったようだ。

さらなる今後の展開

今回の実証実験は、あくまで「奈良の観光地案内」という形だったが、近鉄ではいずれ鉄道にも利用シーンを広げていきたいと目論む。画像をかざして乗車予定の電車や目的地を確認できれば、訪日客だけでなく、沿線の利用者の利便性も高まる。2025年大阪万博に向けて、自社だけでなく関西全域に広げられないかという期待もあるという。近鉄のめざすシームレス案内のプラットフォームとして、今後の展開が期待される。

 

(※)Repl-AIはNTTドコモとインターメディアプランニング社が開発・提供している、AI搭載のチャットボット作成プラットフォーム。曖昧表現の認識など、高度な受け答えができる。また、プログラミング不要でLINE、Facebook Messengerなど様々なプラットフォームに対応していることが特徴。

お問い合わせ


インターメディアプランニング株式会社
Repl-AI 運営事務局
Tel:052-261-8141
URL:https://repl-ai.jp/
Mail:replai.support@ipi.co.jp

 

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