創業468年 右腕人材が長寿企業に「新しい風」を起こす
戦国時代に創業し、458年の伝統と歴史を持つ鋳造メーカー、ナベヤ(岐阜県岐阜市)。時代のニーズを先取りした商品開発で世界を舞台に幅広いビジネスを展開する同社は、次の100年の革新に向けて、大手メーカー出身者を中途採用した。
創業458年の「匠の集団」
かの「桶狭間の戦い」で信長が今川義元を破った1560年(永禄3年)、鋳物業を生業として誕生したナベヤ。創業当時の生産品として織田信長に献上した青銅製の釣瓶は今も岡本家に残されている。鋳物師の免状は、家督の相続時に朝廷より与えられ、1749年の相続免状が岡本家に現存する。
以来、絶えず時代のニーズを先取りした商品開発と販売戦略、鋳造技術の研究開発を続けてきた。現在は、自動車・コンピューター・家電製品などの製造に欠かせない、精密マシンバイスや精密ジグシステム、精密定盤などの治具・工具を主力事業としている。治具メーカーとしては国内トップクラスのシェアを誇り、近年は経済成長著しいアジアへの進出も強化、グループ全体の売上高は約120億円、社員数は約450人に達する。
1万点以上の治具・工具を製造販売する一方で、創業以来458年間、唯一造り続けている製品として「梵鐘」がある。東京柴又帝釈天や愛知大須観音の梵鐘は、かつてのナベヤの鋳物職人によって造られたものだ。
伝統と革新の精神が息づくナベヤに2017年、新しいメンバーが加わった。ソニーグループで技術職を長年務めた、柴田泰成氏だ。現在は国内営業部・次世代治具推進グループの営業技術室長として、機械メーカーへの提案営業や自動化・ロボット領域の新事業開発に取り組んでいる。
革新的な社風こそが長寿企業の強み
ナベヤの岡本知彦代表取締役社長は、外部人材を受け入れた背景を次のように説明する。
「当社の強みは素材・設計から製造・販売に至るまで外注することなく自社で一貫して行っていることで、それ故に、技能職を育てることを何よりも大切にしています。しかし、中小企業が優秀な技術系人材を新卒採用することは難しくなっています。もうひとつ、今の時代の流れは非常に激しいですよね。高速かつ複雑に、グローバルに時代が変化しており、お客様のニーズも目まぐるしく変わっています。自前で人材を育てることに加えて、即戦力の優秀な人材を獲得することもすごく重要です」
こうした中で、地域企業に大企業出身者などの経営幹部人材を紹介する日本人材機構に出会い、柴田氏の紹介を受けた。
柴田氏はナベヤについて、「伝統的でありつつ革新的な、非常に面白い会社」と表現する。「岡本社長を筆頭に、新しいものをどんどん受け入れようという風土があります。外部から来た人材も寛容に受け入れ、私自身も非常に働きやすい環境ですね。このような、声が通る自由闊達な社風が、458年の伝統を支える何よりの強みだと感じます」(柴田氏)
営業と技術を繋ぎ、新事業を開拓
柴田氏の入社に伴い、ナベヤの国内営業部には働き盛りの40代を中心としたメンバーで「次世代治具推進グループ」を立ち上げ、営業技術室長という役職を新設した。
「目まぐるしい事業環境の変化に対応するには、一貫生産や高精度なミクロンオーダーの加工・組立ができるというナベヤの強みを認識した上で、ターゲットの市場を明確に決めて提案営業をしていくことが大切。そこで彼には、生産・技術と営業をリンクする営業技術という新しい仕事を担当してもらっています」(岡本社長)
日本の機械メーカーの中でナベヤの治具は高い知名度とブランドを誇っている。「機械業界の中では、治具や製造の悩みはまずナベヤに相談しようという雰囲気があります。しかしながら、その期待に対応しきれていない部分もありました」と柴田氏は指摘する。顧客の課題をヒアリングして標準品や特注品に加えてシステムを提案しつつ、普遍的なニーズを探索し標準品に落とし込むことが営業技術室長の役割だ。
特に重点領域と定めているのが自動化や無人化だ。IoT(モノのインターネット)技術やAI(人工知能)を活用し、製造工程を自動化したいというニーズは、大手企業のみならず中小零細企業でも高まっている。工作機械と組み合わせて使われることが多い治具にも自動化への対応が求められる。
開発技術・製造・素形材営業部門を統括する酒井正一常務は、柴田氏の入社以降「営業・技術の情報交換が増え、雰囲気も変わってきた」と語る。「最近では営業部門と技術部門に深く関連した引合いが増え、両部門が出掛けていく場面が見かけられます。お客様から難しい質問や注文があっても『彼に聞けば大丈夫』という安心感がありますね」(酒井常務)
「新しい風」を吹かせたい
「大手メーカーも経験した自分が感じる醍醐味は、岡本社長と常にコミュニケーションがとれること。トップの考え方が直に伝わってくるし、私の考え方も直に伝えることができます。アイデアが良ければ『それ、やろう』と、すごくシンプルに進めることができます。大手の場合、1枚の稟議書を社長に提出するだけでも莫大な量の資料づくりが必要ですから、経営のスピード感は段違いですね」と柴田氏は言う。
岡本社長は柴田氏について「将来の役員候補という意識で最初から採用しています」と明言する。「専門的な技術知識だけではなく、リーダーシップや皆を巻き込む能力も求めています。成果が出るのはこれからでしょうが、彼の仕事への姿勢からは『この会社で骨を埋める』という覚悟を感じます」と目を細める。
柴田氏は「期待に応えるためにも、まずは次世代治具推進グループや営業技術室として実績を積み上げていきたい。会社は新しい考えを必要として私を採用したと思います。何とか新しい風を吹かせたいですね」と柴田氏は決意を語る。ナベヤの次代の成長を牽引するビジネスを創造するために、柴田氏の挑戦は続く。
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