家庭教育が授けるリーダーの資質『母の教え』ほか注目の新刊
人格形成に寄与する「母の教え」
人材育成に果たす人格教育の役割が叫ばれて久しい。とりわけ困難な状況に遭っても挫けずぶれることのない耐力が肝要である。この「人としての基本軸」を形成するのに母親からの影響が大きいと考え、「母の教え」を2013年から連載しているのがビジネス情報誌のパイオニアである『財界』。本書は日本をリードする財界人のインタビューを集冊した五冊目に当たる。
弱肉強食の世界である実業界で勝ち残る不屈で強靱なリーダーシップを形づくるのは一見、父親と考えられがちだ。しかし父親とは「青少年期の反抗期もそうだが、成人してからも生き方、働き方をめぐって相克しあうケースがままある。しかし...母親は常に我が子を慈しみ、...、そこには心温かい優しさがある」(本書「はじめに」より)。常に子どもの選択を尊重し、自分の選んだ道を歩む背中をそっと支える母の確かな想いが、むしろ人に自信をもたせ、困難や対立的な意見にも毅然と立ち向かい、説得力を示す姿勢を育むということが伝わってくる。
強靱な財界人の
意外なエピソードに母の影
若くして苦労を重ねた実業家は多いが、その影には、生活を律して家族を支え、誰にでも親切で礼儀正しさを忘れない、といった母親像が浮かび上がる。
例えば、ソニー経営の革新をリードし退任後は新たな起業に踏み切った出井伸之氏は、戦間期の家族の困窮を支え、「得意なものを持て」と激励した母の言葉が原点にあると語る。
また全国で大手エステティックサロンを経営する下村朱美氏は、母の美的感覚に影響を受け、早世した「寂しさ」が、顧客への姿勢と対応に影響を及ぼしたと語る。
そして、数多くの事業を興し現在は学校法人先端教育機構の理事長としてイノベーターをはじめ次世代の人材育成に携わる東英弥氏は、「正しいと思うことは臆せず言い、毅然と立ち向かうこと」が、今もなお新市場を切り拓こうと進むフロンティア精神の基礎にあると語る。
「母の教え」は構想の模範にも
母親の規範やあり方が、本人の成功を決めるとはかぎらない。しかし、苦労を経て成功にたどり着いた実業家は、困難にもじっと耐え、周囲の人間を決して弄することなく、たゆまぬ努力を積み重ねていることがわかる。しばしば、母親が幼少期に姿勢が遠大な構想の実現の模範となっている事実を教えてくれる。
母の教え V
- 『財界』編集部(編)
- 2018年6月刊行
- 本体1,500円+税
- 財界研究所
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