劇団四季・社長が語る 独自メソッドと日本の演劇ビジネスの行方

海外ミュージカルからオリジナルミュージカル、ストレートプレイまで、全国で公演を行なう劇団四季。2014年、カリスマ演出家・経営者として四季を牽引してきた浅利慶太氏が社長を退任し、跡を引き継いだ。第二創業期の渦中にある劇団運営と、変わらない演劇への理念、業界の抱える課題について聞いた。

吉田 智誉樹(劇団四季 代表取締役社長)

創設以来の3つの理念

「演劇とは、舞台上で行なわれるパフォーマンスとそれを観た観客の心の動き、観客と舞台との交流そのものだと感じます」と吉田智誉樹氏は語る。

演劇は、その時代の観客が劇場に集うことが不可欠の必要条件で、それなしには成り立たない芸術といえる。

「同時代に生きる観客の支持を必死に求めねばならない。実に生々しく、矛盾に満ちて人間味に溢れた、非常に泥臭い芸術。それが演劇です。演劇のこうした宿命的な特長からは、どんな規模の劇団、興業会社であっても逃れることはできません」(吉田氏)。

劇団四季には、創設以来変わらぬ、3つの理念がある。『演劇の市民社会への復権』『舞台成果による経済的自立』『文化の一極集中の是正』。

1つめの理念『演劇の市民社会への復権』は、劇団創設の1953年、敗戦で日本の大きな転換期を背景に生まれた。当時の舞台には、政治信条をモチーフとした教条的なものが多かった。

「劇場は教室ではない。観客の人生に寄り添って、明日を生きる力を与えるもの。それが本来の演劇の姿であり、理想です。劇団四季は、この考え方を65年変わらず掲げ続け、一途に守ってきました」(吉田氏)。

2つ目の理念は『舞台成果による経済的自立』。日本の演劇界で劇場に観客を集め興業することで生まれる利益だけで生計を立てている組織は多くない。その中で、劇団四季は舞台収入での経済的自立を実現している。

そして3つ目の理念が『文化の東京一極集中の是正』。新しくて刺激的なものはどうしても大都市に集中する。経営だけを考えれば人口の集中する大都市に作品を集めるのが効率的だ。しかし、離島や地方に暮らす子どもにも観劇のチャンスがなくていいのか...。「演劇は映像と違い複製ができません。自分たちが自分で荷物を背負って大都市だけでなく全国に演劇を届けなければならないのです」(吉田氏)。

創設以来変わらぬこの3つの理念が、今の劇団四季を作り上げている。

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