翻訳家が提案する、人の力をいかしたAIビジネス

「世界を変えるビジコン」で優勝した井原氏と金氏。サービスリリースに向け、大阪青年会議所や大阪イノベーションハブの支援を受けながら、ビジネスプランのブラッシュアップに取り組んでいる。

大阪青年会議所が提供する人財育成プログラムである「Global AcademyOsaka」。世界で起こっている様々な問題の解決を目指し、自分の持つ強みと世代や国籍を越えた人びとが持つ強みを融合させ、更にはIoTやAI、ビッグデータといった最先端のテクノロジー等をいかした独創的なビジネスアイデアを生み出すことのできる人財の育成を目的とした事業が、4月29日~9月2日にかけて大阪イノベーションハブで行われた。

最終プレゼンテーションは9月3日、大阪のまちの魅力を世界に向けて発信するイベント「マチミラOSAKA2017」内の「世界を変えるビジコン」と題したステージに於いて実施され、翻訳業を営むAiKISS代表の井原由樹氏と大阪大学工学部の金成雨氏の2名がペアを組むチームが優勝した。「正しい言語を、正しい目的で、正しい場所へ」届けることをミッションに掲げる同チームのビジネスアイデアは、人の手による翻訳とAIによる翻訳の両方の特性をいかした翻訳アプリだ。

「日本語の機械翻訳は質が低すぎることや、将来AIと戦わなければならないという誤解があることに問題意識を持っていました。また、機械翻訳の質が信頼できないから添削をしてもらえないか、という仕事の依頼を受けた経験があるのですが、既存の機械翻訳では、『目的』を意識した適切な翻訳ができないなどといった課題があります。そこで、まず人間が翻訳し、その情報を蓄積。それを将来的にAIで自動化するという、人間による翻訳とAIによる翻訳が有するそれぞれの良さを兼ね備えたサービスが必要とされているのではないかと考えました」と井原氏はサービスを考案した経緯を説明する。

AIを活用したサービスを考案した井原氏だが、「もともとはテクノロジーに関心がありませんでした」という。「Global Academy Osaka」に参加し、マツコロイドの開発者としても知られる大阪大学基礎工学研究科の石黒浩教授らによる刺激的な講演を聞く中で、最先端のテクノロジーに関心を持った。さらにそこで、技術を持ったパートナー、金氏に出会うことができたことで、優勝したアイデアをプランにまとめることができたのだ。井原氏は今後、大阪青年会議所や大阪イノベーションハブからのサポートを受けながら、サービスリリースを目指したいと話す。

つくれないものはないというほど、技術力を持った中小企業が集積する大阪において、熱量を持った経営者・事業承継者をネットワークする大阪青年会議所が本プログラムを主催することの意義は大きい。

参加者は、熱い思いを持ち、独自の経営資源を有するものの、「最先端テクノロジー」や「グローバル」を意識する機会の少ない方が中心。しかし、国内市場が縮小する中では、既存のビジネスの延長線上で発展するだけでなく、今回のプログラムのような刺激的な機会を中小企業が活用し、化学反応を起こし、熱い思いを持ったビジネスアイデアを生み続けることが大切だ。

「Global Academy Osaka」は来年以降も開催予定であり、大阪から巻き起こる新しい風が日本を活性化させることが期待される。