2017年11月号

クリエイティブのまち青山

東京・青山唯一の銭湯「清水湯」 外国人やランナーも集う

大倉 正敬(南青山 清水湯 四代目)

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1日1軒の割合で減少する銭湯。東京都港区では4軒のみ営業している。青山で唯一の銭湯「南青山 清水湯」は、若者からお年寄り外国人まで多様な人々が思い思いに憩う知る人ぞ知る隠れ家的スポットとなっている。

都心にありながら高い天井が心地よい

表参道交差点から、青山通りを赤坂方面に少し進むとポルシェのショールームがある。その手前の細い路地を入ると銭湯「南青山 清水湯」が見える。マンションの2階部分が銭湯になっている。洋風の瀟洒な建物であるが、前を通った人は、驚きの声をあげることも多い。

「青山のど真ん中に銭湯があること自体、意外性があるようで、皆さん驚かれています」と四代目の大倉正敬氏。

曾祖父が新潟から上京して、100年以上前に開業したというが、詳しい開業年は資料が残っておらず不明である。「曾祖父は、千駄ヶ谷村(現在の渋谷区千駄ヶ谷)の村長もしていたと聞いています。かつては千駄ヶ谷のキラー通りにありました。ちょうど現在はワタリウム美術館があるあたりです。前回の東京オリンピックで、現在のキラー通りができることになり、道路整備のために南青山に移転しました。千駄ヶ谷のころは銭湯建築によく見られる破風造の和風建築でしたが、南青山に移転する際に、鉄筋コンクリートのビル建築になりました。当時は針金入りのガラスなど珍しい建材も使われてモダンなビルでした」

人気の本格派サウナ

楽しくなるところを目指す

9年前に老朽化で立替を決断した。

「周りからは、南青山の好立地なのに、なぜ銭湯を続けるのか、とずいぶん言われました。しかし銭湯は一度辞めたら二度と復活することはできません。私は銭湯が青山にあったら面白いなと思っています。ですから、立替を決めたとき、これまでの人生でいちばん勉強したというほど、徹底的に研究しました。スーパー銭湯を含め、たくさんの施設を見て回りました。サンプルもたくさん取り寄せて、家じゅう、タイルの見本だらけになったほどです。床のタイルは高機能な日本製です。すべりにくくて、肌に優しい素材を実際にお尻に敷いてみて徹底的に比べました。一方で壁面のタイルは男湯がイタリア製、女湯がスペイン製です。手作りで一つ一つ形も違いますので、費用はかなりかかりましたが、妥協しない本物の施設をつくることが、生き残りのためにも重要なことだと思いました」

「お風呂に使う水にもこだわっています。水は水道水ですが、フィルターでミネラル分を取り除いています。ミネラル分が多いお湯では、肌や髪がカサカサになってしまいます。うちのお湯で洗うと、身体がぬるっとした感覚が残りますが、これは身体の脂分が失われずに保たれているということです」

生ビールやシードルも人気

浴室は、高濃度人工炭酸泉やシルク風呂、ハーブバス、サウナなど多彩で楽しい。カウンターには、生ビールサーバーも置いてあり、風呂上がりに飲んでいる姿も見かける。カウンターは、女性スタッフが中心で、初めての人でも親しみやすい。

「銭湯というと、馴染みの常連でないと入りにくい雰囲気があるという印象をお持ちの方が多いかもしれません。かつて自宅に内風呂がない時代には、身をきれいにして衛生的な状態を保つための場所でしたが、現在ではほとんどの家に内風呂があり、そういった需要はなくなっています。銭湯は、楽しくなるところでないといけないと思います。ですから、カウンターも、親しみやすく、初めての方でも入りやすいようにと心がけています。生ビールやシードル、アイスクリームなど自分でよいと思ったものを探し歩いて厳選しています。今治タオルはじめ販売商品も毎年増やしています」

いつも清潔に保たれた脱衣場。毎週月曜と木曜にハーブバスも実施

白い床でいつも清潔

館内は浴室も脱衣場も休憩室もいつも清潔に保たれている。それは、裏方での努力の賜物である。

「たくさんのお客様にお越しいただいていますので、清掃には気を使っています。あまり浴室に入りすぎて邪魔をしてもいけないのですが、昼の12時から夜の24時の営業時間中は定期的に細かくメンテナンスをしています。普通、脱衣場や休憩スペースの床は、髪の毛などが気にならないように濃い色にするものですが、うちでは、白い床ですので、ちょっとでも汚れていると、すごく目立ってしまいます。そのため頻繁に清掃するようになっているのです。また、営業時間後は、お湯を抜いて、毎日3時間以上かけて徹底的に浴室を清掃しています。服装も完全防備で汗だくになりながら専用の洗剤で汚れを落としています。私と妻と息子の3人でやっていますが、寝るのは朝の7時くらいです。10時半ころに起きて開店準備と清掃を行い、営業中に交代で休憩しています。水回りでは機械の不具合も起こりますので、1日中気が休まることがないです。週1日の定休日や、年に何日かの休みは身体の調子を整えるようにしています」

幅広い客層から支持

都心に立地しているため、外国人の観光客やランナーも多く利用している。

「外国人観光客むけのフリーペーパーやWebサイトに紹介されることもあり、海外のお客様も多いです。皆さん非常にマナーもよいです。国内の観光客の方も全国からいらっしゃいます。20歳代の若い学生さんから地元のお年寄りまで様々な年代層の方にご利用いただいております。また近年、ランナーの方にも多く利用されています。荷物をお預かりするスペースが少ないため、十分な対応はできませんが、喜んでいただいています」

「私は、小さいころから銭湯の仕事を手伝っていましたので、自然と将来は継ぐものという意識がありました。私の息子も一緒に仕事をしてくれています。銭湯の仕事は非常にハードワークです。彼がいるからこそ、続けられています。これからも青山のまちに、楽しい空間を提供し続けていきたいです」

大倉 正敬(おおくら・まさひろ)
南青山 清水湯四代目
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