民事再生から黒字経営へ 社員の声からアイデンティティ確立

2015年1月の民事再生申立から2年。運行品質、定時性、顧客満足の向上に努めてきたスカイマーク。再生に向けて飛躍する新生スカイマークの掲げる、新たな経営ビジョン、ミッションとは。

機体を小型ジェット旅客機であるポーイング737一機種に統一し、大幅なコスト削減を行った

企業アイデンティティを刷新

1998年、日本の新しい翼として産声を上げたスカイマーク。それまでにない低価格モデルを確立し、当時、航空業界に革新を起こした。しかし、LCC(Low cost carrier)と呼ばれる格安航空会社の出現で競争が激化した上、円安が重なり、資金繰りが悪化。2015年1月、民事再生法の適用を申請した。

経営を立て直すべく新体制が敷かれる中、2015年9月に新社長に就任したのは、日本政策投資銀行常務を務めた市江正彦氏。「会社の経営状況が悪化し、外部から新社長が来る。しかも金融出身の社長ですから、社員のモチベーションは上がらなかったことでしょう」と、就任当時を振り返る。

金融界出身として財務を立て直すだけでなく、経営、事業自体を改革し、企業の成長にコミットしていくことを新社長の使命と心に決めて向かった就任式。「金融業界に戻るつもりはありません。みなさんと一緒に成長していきます」と社員に宣言した。

市江氏が新社長として最初に行ったことは、新たな企業アイデンティティの確立だ。執行役員、課長など約200人と個別に面談し、会社をどうしていきたいかを社員にヒアリングした。そして、社員全員が共通の目標に向かって業務にあたることができるよう、〈経営理念〉、〈企業ミッション〉、〈長期ビジョン〉、〈お客さまへの約束〉の4つからなる、新生スカイマークの方針を定めた。

新たな企業アイデンティティを設定する一方で、財務面では構造的なコストの削減に努めた。

「航空会社のコスト構造はシンプルで、固定費の塊みたいなものです。機体の購入、部品交換、整備にかかる費用のほか、人件費も大きな割合を占めています」

便数が多い時は1日約130便を飛ばすスカイマーク。パイロット、客室乗務員、整備士、地上スタッフなど、約2000名の社員を抱える。

航空業界では、機体の機種が変わると、パイロットの資格も整備士の資格も変わる。つまり、機体を2機種以上持つことは、サービスの幅は広がるが、コストと人件費は膨れ上がる。一時期300人乗りも使用していたが、機体を小型ジェット旅客機であるボーイング737(177人乗り)一機種に統一し、コストの大幅な削減に成功した。

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