印刷会社のイノベーション~柵からの脱却~

イノベーションを常に起こし続けるには、どうすればいいか――多くの組織がこの課題に向き合っているが、必ずしも成果が挙がっていない。どのような視点を持つことで、突破口が開けるだろうか。

これだけ世の中がイノベーションを求めている中、現実的に自社の新たな事業性を創出できている企業は少ない。外部環境、とりわけPEST事象(政治的、経済的、社会的、技術的動向)や機会を理解している企業も少なく、一方で内部環境における経営資源の棚卸しを明確に実行している企業も少ないため、これらイノベーションに必要な情報の不足により発露を掴むことができずにいるのではないだろうか。

イノベーションを志向する際に、最も重要な思考のひとつは、上記のように外部・内部の情報要素や環境性を符合させることにある。つまり、PESTを包括する外部メンター、経営資源に精通した発案者、情報を整理しベクトル化する(方向性を決める)ファシリテーターが同一目的の場にいる状態だ。これらの情報が錯綜するオープンイノベーションコミュニティが企業内に存在することにより、戦略ではなく構想としてイノベーションを定常的に志向することができる。

そして、このようなオープンイノベーション環境を渇望している業界がある。印刷業界だ。彼らの多くはB2Bを生業とする広義のメーカーであるが、一方で、印刷技術の変遷はドラスティックであり、事業変化に敏感である。そしてなにより、印刷からインターネットに事業性やキャッシュフローが移行している中で、自社の存続をかけて徹底的なリスクヘッジをイノベーションに求める必要がある。そんな印刷業界において、オープンイノベーション環境は必須であり、可及的速やかに過去の印刷シェアを凌駕する事業領域を確保するため、ルーティンとして「実験と学習」を継続するニーズが高いのだ。

ただし、印刷会社はコンサバである。

商業印刷のビジネスモラルにおいて、彼らのアイデアは短期的・狭小的になりがちである。求められるのはアイデアではなく商品であり、小ロットの付加価値ではなく大ロットの印刷物が常に優先される。さらには、グローバルよりドメスティックが優先されることもあるだろう。このような状況に対して、最も簡単な答えは「制約から解放すること」である。ハーバード大学のクリステンセン教授は、このことについて4つの視点を挙げて説明している。

  1. (1)成長のブループリント(目指すものを示す)
  2. (2)ガバナンスとコントロール(イノベーションをマネージする仕組み)
  3. (3)事業の創造システム(イノベーションできる人はスゴイ!という価値観と評価)
  4. (4)リーダーシップ、人材、風土(イノベーションを善とする環境性)

 

どんなに自由を謳っても、ビジネスマンの心は長い慣習によって萎縮している。自由度を上げるには、革新的オーナーシップと外的圧力が必要だ(顧客やパートナーによって変化を余儀なくされる状態)。

事業構想大学院大学では、前述のようなイノベーションフレームワークを企業に提供する活動を行っている。最も参加企業の多い「地域エネルギー事業構想プロジェクト研究」においては、発案者=各企業から派遣された研究員と、イノベーションフレームワークをファシリテーションする教員、外部・内部の情報・環境を提供する現職国会議員や各省庁の官僚、ベストプラクティスを持つ企業経営者、様々な情報の串刺しが可能な専門的編集者などが一同に会して、地方創生の礎となるべきエネルギーのイノベーションモデルを多数産出している。興味がある諸氏は、気軽に事業構想大学院大学までお立ち寄りいただければ幸いである。

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