2016年7月号

ザ・ライバルズ

不動の大手JTB vs. 発想力ベンチャーH.I.S.

月刊事業構想 編集部

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訪日観光客の急増、オンライン販売の増加など、経営環境が激変する旅行業界。そのトップの座に君臨する100年企業JTBと、これを猛追するH.I.S.。両社の戦略の違いや現状などを概観する。

ジェイティービー

 

設立 1912年3月12日(ジャパン・ツーリスト・ビューロー設立)
代表者 田川 博己(代表取締役会長)
従業員数 29,194人
売上高(連結) 1兆3,239億円(2015年3月期)
拠点数 36ヶ国 100都市 516拠点

エイチ・アイ・エス

 

設立 1980年12月19日(インターナショナルツアーズ設立)
代表者 澤田 秀雄(代表取締役会長)
従業員数 13,612人(グループ全体)
売上高(連結) 5,374億円(2015年10月期)
拠点数 65ヶ国 134都市 517拠点(国内301拠点)

 

売上高(連結)

JTB

H.I.S.

 

海外進出国数

JTB

H.I.S.

 

図1 海外旅行取扱額

(2014年4月〜2015年3月)

(単位:千円)*JTBはグループ15社合計。H.I.S.はH.I.S.とグループ4社の合計。
出典:観光庁「平成26年度主要旅行業者旅行取扱状況年度総計(速報)」

 

図2 大学生就職企業

出典:マイナビニュース 2017年卒マイナビ大学生就職企業人気ランキング(文系)

 

図3 海外旅行取扱額の比較

*2016年2月期
出典:観光庁「主要旅行業者の旅行取扱状況速報」/トラベルボイス

 

図4 訪日旅行取扱額の比較

*2016年2月期
出典:観光庁「主要旅行業者の旅行取扱状況速報」/トラベルボイス

安定した総合力のJTB、自在の発想と機動性のH.I.S.

観光庁によると、平成26年度(2014年4月〜2015年3月)の国内旅行会社の海外旅行取扱額はJTBがトップで約4,779億円(グループ15社計)、H.I.S.が約3,651億円(グループ5社計)でこれに続き、この2社が3位以下を大きく引き離す。

2016年2月期の海外旅行取扱額でも約320億円でトップのJTBをH.I.S.が約302億円で猛追、1月期には訪日外国人旅行の部門でもH.I.S.が2位につけた。安定した総合力によってトップを独走する老舗JTBの背中を、海外旅行に力を集中してきたH.I.S.が追いかけ続けている、というのがこのところの構図だ。

明治時代の終わり、外国人訪日を誘致する組織として発足したJTB。その歩みは日本の旅行業の歴史に重なる。旧国鉄の乗車券販売代理店として地盤を固め、1964年に自由化された海外旅行の取扱額増加とともに成長。

この頃に誕生した国内旅行の「エース」、海外旅行の「ルック」は今なお看板の団体旅行商品だ。90年代以降、他の業界同様バブル崩壊や不況などの大波にさらされるが、最も大きな波はインターネットの普及と、それに伴う個人旅行へのシフトなど、旅行スタイルの変化と多様化だった。

一方、1980年の設立以来、主に海外旅行の格安航空券販売で業績を伸ばし、若い世代を中心とする旅行形態の変化、意識の変化の波に乗るように成長してきたのがH.I.S.である。法人向けツアー販売などを大きな収益源としたJTBと対照的に、個人の海外旅行向け商品で成長したH.I.S.。その推進力は、常識にとらわれない、ニッチを狙うベンチャーならではの発想力と機動力だ。

2010年の「ハウステンボス」買収、2012年の航空会社設立に続き、今年は電力小売にも進出、その自由な発想ぶりが世間を驚かせた。ホテルや運輸などを含む多様な事業のシナジーを、同社の言う「垂直統合型」サービスにつなげうるダイナミズムがH.I.S.の強みだ。

強みと言えば、両社に共通するのは強力な拠点ネットワークで、創立当初から世界を舞台にしてきたJTBが世界36ヵ国に516拠点を展開するのに対し、長く海外旅行に特化してきたH.I.S.は65ヵ国517拠点で、旅行会社の進出国数としては世界最大だという。

JTBでは昨年から、国内拠点での販売とネット販売の連動を図るオムニチャンネル化を本格化させているが、蓄積されたノウハウを活かしたリアル店舗のコンサルティング機能などは、ネット専業の、いわゆるOTA (Online Travel Agent)には太刀打ちできない大きな強みだ。

一方、H.I.S.は特にLINEによる若者層のマーケティングとリアル店舗への誘導というO2O戦略に力を入れており、LINEを通じて「旅マエ」から予約、「旅ナカ」「旅アト」の全フェーズをフォローする。全国301の拠点は、もちろん電力小売の窓口でもある。

訪日観光客が毎年過去最高を更新する今、世界に張り巡らしたネットワークは外国人客の旅行ニーズを収集する拠点でもある。JTBは、旅を「世界発・世界着」のグローバルな「交流文化事業」と位置づける今後の事業展開に、その拠点網を活用する。

H.I.S.も世界で集めたニーズを国内旅行商品に反映、地域と連携して、立ち後れている国内旅行事業の拡充に活かす取り組みを始めた。訪日客の増加、ネット販売の拡大、SNSの普及など、経営環境が大きくかつ急速に変わる中、このトップ2社が今後どのような手を打っていくのか、注目される。

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