2016年5月号

SXSW 2016 レポート

ベンチャーの登竜門 ツイッターに続く成長株の企業は?

江端 浩人(事業構想大学院大学 教授、アイ・エム・ジェイCMO)

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毎年3月に米テキサス州オースティンで開催される「South by Southwest」は、音楽・映画・最新技術の祭典だ。ツイッターを世界的サービスに成長させるきっかけとなった祭典であり、IT系ベンチャーの登竜門とも言われる。今年の祭典で注目の最新技術とベンチャーを紹介する。

音楽・映画・最新技術の祭典「South by Southwest2016」は3月に開催された

テクノロジーの進化やグローバリズムの広がりの中で国際展示会やカンファレンスが活況を呈しているが、その中でもひときわ独自の雰囲気を持っているものがテキサス州の州都オースティンで行われているSouth by South west (サウス・バイ・サウスウェスト:以下、SXSW)だろう。このイベントのメインは「音楽・映画・インタラクティブ」で、前座に「教育」のフェスティバルが行われる。

インタラクティブ部門でオバマ大統領がスピーチ

もう既に色々なレポートが上がっているのではあるが、こちらを触れないわけにはいかないだろう。筆者の感想を述べると、日米の経済成長力の違いを露呈させたと感じられる内容であった。オバマ大統領のスピーチの内容を要約すると以下のようになる。

・技術革新がもたらす機会と脅威

技術進化は個人や企業と同時に、悪意を持つ人にも力を与えて悪い情報を広めること等を可能にしてしまった。

・政府の取り組み

テクノロジー、デジタルプラットフォームを活用して良くする取り組みを始めている。学生の奨学金、ソーシャルセキュリティの申請などに取り組み、政府が率先して使い勝手の良いサービスを提供する必要がある。ビッグデータを活用した医療、個人別の的確な薬剤処方を国内中、世界中の研究結果を集結させて実現する。

省庁をまたいだプラットフォームのスワットチームを結成、グーグル等からの優秀な人材を集めて問題解決をしている。米国は民主主義なのに半分の人が投票していない。ピザを注文する位に簡単に投票しなければいけない。市民のネット接続時間が長くなり、興味持続時間が短くなっている事に対応しなければいけない。

・デジタルデバイドに関して

家庭ではヒスパニックは過半数がネットに繋がっていなく、非白人は54%が繋がっていない。教室は99%がブロードバンド化されている。これには民間の企業も参加している。

民間の力を活用した省庁横断のプラットフォーム形成などは大きな効果が期待できると思われ、新しいトレンドを取り込んで国家の成長の原動力とするころは日本も見習わねばならぬと考えざるを得なかった。

ビジネス系セミナーもクリエイティブの要素が豊富

SXSWは元々音楽と映画の祭典であるためか、ビジネス系のセミナーもアートやクリエイティブの要素が含まれているものが多い印象だ。その中でも「Cognitive(認知的な)」や「Human-Centered(人間中心の)」といった、人間の頭脳にフォーカスしたキーワードが目立っていた。

日本においてもUIやUX等のキーワードはだいぶ普及してきてはいるものの、ヴィジュアルデザインのテクニックとしての側面が強く、本来それらが目指す思想とは乖離があることが多いのが現状だ。Airbnb社のUXデザインマネージャーであるSteve Selzer氏は、「より良いUXのためには、人間である私自身をもっと知る必要がある」と説き、「旅先での満足度を最高にするものはホストのもてなしである」という観点で同社サービスをデザインしていると語っていた。

また、認知科学の博士でBrilliant Experience社の創業者であるJohn Whalen氏は、「UXは画面ではなく人間の頭の中の話である」と強調していた。IBM社は、Cognitive Studioというタイトルでパビリオンを展開しており、同社が開発する人工知能のプラットフォームであるWatsonのデモンストレーションや、VR(仮想現実)技術を使ったサイクリングマシンを体験することができた。

Airbnb社 UXデザインマネージャー Steve Selzer氏

NASA火星探索ミッションに評判のSlackの社長も登壇

テキサスの州都でもあるオースティンはHouston Space Centerが近いこともあり、宇宙関連のNASAの展示やセッションも行なわれていた。その「火星探索チームがロボット探索を成功させた時に利用したチーム内コミュニケーションツール」と銘打って急成長のSlack社のCEO、Stewart Butterfield氏によると、Slack社は企業(チーム)内のメールに代わるコミュニケーションツールとしてSlackを考えているという事である。PCからスマートフォン、ソーシャルに移っている時代のビジネスOSになりたいとして発展させていきたいという事であった。それはWindows、Mail、OfficeのようなプラットフォームとしてSafesforce等営業ツールとのインテグレーションを進めているという事である。

Slack社 CEO Stewart Butterfield氏

日本のベンチャーに注目「Sky Canvasプロジェクト」

日本勢の出展の中でもひときわ異彩を放っていたのは宇宙に関心のある土地柄も合わせて「エンターティメントとして流星を発生させる」Sky Canvasプロジェクトを推進するALE社の岡島礼奈CEOだろう。人工衛星に小石大の流星のもとを1,000粒搭載し、軌道に乗せた後発射することで任意の場所から晴天であれば見ることが出来る流星を人工で製作することが出来るという事である。「初号機の打ち上げまでは累計10億円ほどかかる」(岡島CEO)ということで、流星一つあたり100万円ほどかかるが、もし例えば2020年の東京オリンピック時に実現すれば歴史的なショーとなる事は間違いない。「できる事ならば実現したい」という岡島CEOの野望はSXSWでさぞかし膨らんだことであろう。

ALE社 CEO 岡島礼奈氏

(取材・執筆協力:事業構想大学院大学修了生、イノベーター・ジャパン代表 渡辺順也)

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