2016年2月号

国土強靭化への提案

地図を「備蓄」し、有事に対応 ゼンリンの災害時支援協定

山本 勝(ゼンリン上席執行役員第一事業本部長)

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災害時の情報共有や被害状況の確認に必要となる地図を、平時から自治体に提供し、万一の時にすぐ使えるようにするゼンリンの「災害時支援協定」。すでに145自治体と協定を結んでおり、新しい公民連携にもつながっている。

ゼンリンでは自治体が抱える課題を官民連携でどのように解決に導いていくか、実際の事例を通じて紹介している。(http://www.zenrin.co.jp/autonomy/

ゼンリンは日本を代表する地図情報会社であり、中でも、家一軒一軒の表札情報を網羅する『住宅地図』を唯一全国規模で製作する企業だ。住宅地図は調査スタッフが全国をくまなく歩き回って製作しており、65年以上も情報を更新し続けている。

こうしたゼンリンの地図は、自治体において平時はもちろん、災害などの非常時にも必須のツールである。被害状況の把握、安否確認、行政と消防やボランティアとの情報共有、罹災証明など、その利用シーンはさまざまだ。

阪神大震災や東日本大震災などの大規模災害が発生したときも、ゼンリンは自治体の要望に即座に応え、住宅地図や広域地図を被災地に提供。最近も茨城県常総市の鬼怒川堤防決壊において、行方不明者の安否確認のために地図を自衛隊や自治体に提供している。

災害時支援協定とは

2013年にスタートした『災害時支援協定』は、平時から各種地図を自治体に提供することで、災害発生時の対応をスムーズにし、防災・減災につなげることを目的としている。

ゼンリン上席執行役員第一事業本部長の山本勝氏は、「過去の教訓から、当社の災害支援をしっかりとしたシステムとして提供しなければと考えました」と話す。

「災害発生時には瞬間的に沢山の地図が必要になりますが、発行元の当社でも、特定地域の地図を多く持っているわけではありませんし、被災地に届けるには2~3日かかります。役所内に当社の地図があっても、それが最新のものとは限りません。地図の複製にも当社との協議が必要になります。こうした問題を乗り越えるためには、地図を“備蓄”して平時から準備しておくことが大切だと考えました」

災害時支援協定を結んだ自治体には、万一の災害発生時に地図をすぐ使えるよう、住宅地図と広域地図、さらに災害時に地図をコピーすることを認める複製利用許諾を提供する。そして年に一度、ゼンリンのスタッフが自治体に訪問して、古い地図と最新の地図を差し替える。さらにWEBで利用できる住宅地図システムも提供。これらをすべて無償で行い、災害時だけでなく、平時から防災訓練などに地図を活用してもらう。

現在、145自治体と協定を締結しており、「最終的には1700を超えるすべての自治体に備蓄用地図を提供したい」という。「ある自治体では、協定締結から1週間後にゲリラ豪雨によって水害が発生しました。最初は『災害は少ない土地柄だけど、地図はあっても困らないから』と協定を結ばれたのですが、災害後には『地図はやはり必要だったね』と感謝の言葉を頂きました。我々の取り組みは間違いではないと、大きな自信になりました」

山本勝 ゼンリン 上席執行役員第一事業本部長

自治体との密な連携から新しい防災対策が生まれる

災害時支援協定は、自治体の目指す「安全・安心な街づくり」の支援だけでなく、ゼンリンにとっても、よりよい防災ソリューションを創るための機会にもなっている。

「災害時支援協定をきっかけに、今までよりも自治体とのコミュニケーションが密になり、防災・減災に関する課題やニーズを直接聞けるようになりました。これらを一緒に解決できるようなサービスを創出したり、提案をしていくことが次のチャレンジです」

例えば、自治体の危機管理部門は、有事には各部門を総括し指揮をとる立場だが、当然ながら平時は各部門がばらばらに業務を行っている。つまり災害発生時に必要な情報が一元管理され、すぐに手に入るとは限らない。そこで、ある自治体とは危機管理の担当者が災害発生リスクを事前にキャッチして対策や市民への周知に動くために、気象情報や土砂災害警戒判定メッシュを地図上に表示するシステムで支援を検討。さらに、課題となる災害時の要援護者支援に向けて、他の所管課が保有する居住情報を同様の地図システム上に紐付けて可視化するなど、危機管理を軸に自治体の各部門を横連携させる策についても議論を交わしている。

「このように自治体と民間が知恵を絞ってつくりあげた防災対策は、他の自治体でも活用の可能性が充分にあります。自治体との協働で培ったノウハウを横展開し、普及させていけば、自治体同士の災害時の情報連携もスムーズになるはずです」

総合的な自治体支援へ

ゼンリンの地図を活用できる分野は防災に限らず、近年ではさまざまな自治体の課題解決につながっている。

例えば、深刻化している空き家問題。ゼンリンは本年度から本格的に住宅地図の製作調査時に全国の空き家のデータベース化を進めている。2015年5月に施行された空き家対策特別措置法で、自治体は空き家問題の実態把握と対策が必要になっているが、ゼンリンは既に約100自治体にデータを提供し、加えて、調査受託から空き家利活用の提案までを行っている。

「空き家や、その撤去後の空間を有効活用し、移住や交流を促進するなど、リスクをメリットに変えることも可能だと考えています」

観光振興においても、ドライブマップや道の駅情報を活用した誘客支援を行っている。こうした総合的な自治体支援活動を強化するため、12月には山形県とゼンリンで、観光振興や空き家対策の推進に関する連携協定を結んだ。

「空き家管理や観光振興など、防災とは異なる性質の課題に対しても、自治体と密なコミュニケーションを図りつつ、地図を活用した解決策の立案に取り組みたいと考えています。住宅地図というオンリーワンの資源を持つゼンリンにしかできない、社会への貢献方法が沢山あるはずです。これからも地図の可能性を追求していきたいですね」と山本氏。ゼンリンは防災・減災をきっかけとした自治体支援によって、地方創生の実現を目指していく。

ゼンリン自治体支援プロジェクト

自治体様が抱える課題を官民連携でどのように解決に導くかを、 実際の事例を通じて紹介しています。

 

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  1. 株式会社ゼンリン
  2. 出版事業部 出版企画課
  3. TEL:03-5295-9103
  4. http://www.zenrin.co.jp/
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