イノベーションの始祖、クリステンセンが語る「成長企業の条件」

新たな成長事業を生み出す方法論とは何か――。11月、イノベーション研究の第一人者、クレイトン・クリステンセン氏(ハーバード・ビジネス・スクール教授)が来日した。破壊的イノベーションの始祖からの、経営者へのメッセージとは。
取材協力 : Japan Innovation Network/NEC

 

Clayton M. Christensen【クレイトン・クリステンセン】ハーバード・ビジネス・スクール教授

私は今まで、どうやったらイノベーションが引き起こせるのかという理論を追求してきました。皆さんにお伝えしたいのは、イノベーションは技術ではなく、経営のせいで失敗するということです。

破壊的イノベーションへの誤解

成長は、どのようなイノベーションによって引き起こされるのでしょうか。最初に、イノベーションには3つの異なるタイプがあり、それぞれ役割も異なることを知りましょう。

まず破壊的イノベーション。よく誤解されるのですが、破壊的イノベーションとはブレイクスルー(突破、躍進)ではありません。アフォーダブル(手頃)でアクセシブルな、多くの人が手に入れられる製品を創出する、という意味です。性能が優れているのではなく、より多くの人がその製品にアクセスするようになり、市場が拡大し、新規企業が既存企業を打倒してしまうわけです。

日本企業も破壊的イノベーションを何度も起こしています。1960年代、トヨタがアメリカ市場で発売したコロナというアフォーダブルでアクセシブルな自動車は、大学生でも買えて、車の市場自体を拡大させました。GMやフォードの経営陣は、大型車と小型車の利益率を比べ、トヨタと競争する意味はないと考えました。しかしその結果、デトロイトはすっかり凋落してしまいます。

破壊的イノベーションは、企業と経済を成長させ、より多くの雇用を生み出すことができます。世界的に、ほとんどの成長は破壊的イノベーションで生まれています。

二つ目は、持続的イノベーションと言われるものです。これは、今ある製品をより良くし、利益を持続させることです。今のイノベーションは、持続的イノベーションがほとんどです。しかしながら、大きな成長は生み出しません。トヨタのプリウスを買った人は、カムリを買うことはないでしょう。持続的イノベーションは何かを何かに置き換えるもので、成長は小さいのです。

三つ目は、効率型イノベーションです。より大量のものを、より低価格でつくることです。効率化は雇用を削減し、同時に企業のキャッシュフローを改善します。

この結果、フリーキャッシュフローをつかって、破壊的イノベーションを生むための投資ができるようになります。この3つのタイプのイノベーションを循環させれば、成長のシステムができるはずです。

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