地方よりも急激に進む「都市の高齢化」にチャンスあり

高齢化や人口減少の深刻化は、これまで地方が注目されてきた。しかし今後地方以上に東京で深刻な問題になるという。地方に高齢者は多く、東京に若者は多い。

しかし、「この状況は急激に変化する」と政策研究大学院大学の松谷明彦名誉教授は指摘する。東京の高齢化の問題を3つあげている。ひとつは、若い世代が激減し、財政が悪化すること。次に、道路や橋、民間ビルを含めた社会資本の十分な維持が難しくなること。3つ目は、東京の経済成長率は2030年過ぎにはマイナスになる可能性が高く、人々が貧しくなることだ。

「東京劣化」を回避する

東京劣化

―地方以上に劇的な首都の人口問題

  1. 松谷明彦(著)
  2. PHP研究所
  3. 本体780円+税

この深刻な事態を回避するための手段として、まず「生産性向上」が必要だという。ここでの生産性向上とは、大量生産し、薄利多売を行うことではない。「他の国が作らない、独自のものを作ることで活路が見いだせる」と話す。

「日本人の力だけでは難しいので、世界から優秀な人材を集めるべき。多くの外国企業を日本に誘致し、優秀なブレーンを集めることが必要です」

第2の手段としては、「フローからストックへ」考え方を変えることを挙げた。「例えば、東京では4割程度の人が家を持たず、この人たちの年金は大部分が家賃として使われています。このため、年金が下がれば、住むところがなくなり、難民になる可能性もあります。しかし、欧米では低廉で良質な公共賃貸住宅があり、家賃が月2、3万程度で借りることができます」。

日本の建築技術では、200年もつ住宅を作ることが可能になってきた。国や地方自治体により、公共賃貸住宅が整備されれば、年金を下げても、高齢者の生活は可能になる。

第3の手段は、社会資本の方向を変えることだ。社会資本の維持費は膨大であるため、まちづくりを変える必要がある。「経済縮小とともに東京のビルの4分の1程度は入居者がなくなると予想されます。建て替えせずに朽ちて、スラム化する前にリノベーションなど対策をする必要があります」

新しい事業のチャンスは都市の高齢化からも見出すことができるだろう。

松谷 明彦(まつたに・あきひこ)
政策研究大学院大学 名誉教授

今月の注目の3冊

会議に呼ばれる人 はずされる人

  1. 野呂エイシロウ(著)
  2. 日経BP社
  3. 本体1,400円+税

 

会議に呼ばれる人と、はずされる人では、10年後の評価と実力に圧倒的な差がつく。放送作家であり、コンサルタントである著者は、テレビ局の企画会議や大手企業の販促会議など、年間2000件以上の会議に参加する。「会議で大切なのは、常にゼロベースで臨むこと。その瞬間、その瞬間の材料で考えるべき」と書かれている。ビジネスパーソンにとって決定的に重要な「会議の技術」を本音で伝授する。

社会的インパクトとは何か

― 社会変革のための投資・評価・事業戦略ガイド

  1. マーク・J・エプスタイン(著)、クリスティ・ユーザス(著)、鵜尾雅隆(監訳)、鴨崎貴泰(監訳)、松本裕(翻訳)
  2. 英治出版
  3. 本体3,500円+税

 

「社会的インパクト」がどのように測れるのか。現在、個人や企業のあいだでも社会貢献への意識が向上し、国内外で社会的インパクト投資を進め、その成果を測る流れにある。本書は、「アウトプットとインパクトの違い」「ミッションの重要性」「投資家は何を重視しているのか」など、組織や事業の根本的なあり方を問い直す必要性を訴えている。社会的インパクトを生み出すための事例を分析した体系的・包括的な解説書。

これからのマーケティングに役立つ、サービス・デザイン入門

  1. J・マルゴス・クラール(著)郷司陽子(翻訳)、長谷川敦士(監修)
  2. ビー・エヌ・エヌ新社
  3. 本体1,600円+税

 

日本では製造業をはじめとする多くの企業が、「モノ売りからサービス提供への転換」を図っている。

本書は、この実現のための事業・組織開発手法として注目されるサービス・デザインについて、平易な言葉で説明した入門書だ。ツールやメソッドを詳しく解説する本ではないが、顧客目線でビジネスを再編することの価値がすんなり理解できる。多くの経営者に読んでもらいたい1冊。

名著

魔法のイノベーション・パワー

世界を変えるインパクトをもったプロダクツを次々と生み出す「MITメディアラボ」。そのイノベーション・パワーが尽きない秘訣とは何か。一つは「反学問的精神」という概念だ。メディアラボでは、先入観にとらわれることなく、今までとは全く違った角度から問題を見つめている。二つ目は特徴的なカリキュラムにあり、最初の学期に「How to make」という実習講座をとる。考えを自分で形にする力を習得する。三つ目は、学生や研究員の発想をサポートする環境があることだ。スポンサー企業は、すぐに商品化できる知的財産を求めているのではなく、想像力豊かなアイデアや発明に次々と触れられる機会を提供している。本書では、第三代目所長を務めたフランク・モスの視点でその秘密が書かれている。

MITメディアラボ

―魔法のイノベーション・パワー

  1. フランク・モス(著)、千葉敏生(翻訳)
  2. 早川書房
  3. 本体2,000円+税

 

 


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