2015年8月号

イベント報告

アジアの起業家30チームが結集 優勝は再生医療のサイフューズ

月刊事業構想 編集部

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5月末、国際ビジネスコンテスト「アジア・アントレプレナーシップ・アワード2015」が開催され、アジア各国から30社が集結、ビジネスプランを競いあった。優勝に輝いたのは再生医療に取り組むサイフューズ。大会の模様をレポートする。

AEA2015には、アジア12カ国・地域から30社が参加した

アジアから30企業が参加

国際ビジネスコンテスト「アジア・アントレプレナーシップ・アワード(AEA)」は今年で4回目の開催。会場の千葉県柏市・柏の葉キャンパスに、アジア12の国と地域から過去最多となる30社のベンチャー企業が集まり、3日間に渡ってビジネスモデルやアイデアを競い合った。

主催者である一般社団法人フューチャーデザインセンター(小宮山宏最高顧問=元東京大学総長)は、三井不動産などを中心に組織され、柏の葉キャンパスエリアを拠点に産官学連携によるまちづくり、イノベーションフィールドの構築に取り組んでいる。

「日本がアジア、世界のイノベーションの中心となるには、国内のみならず海外からも若い起業家を惹きつけなければなりません。国際的なビジネスコンテストによって、アジアでのベンチャー支援のエコシステムをつくること、そして内向きな日本のベンチャー企業の目を海外に向けさせることが、AEAの狙いです」と、企画を担当した三井不動産ベンチャー共創事業部主査の加藤慶氏は説明する。

AEAでは出場者によるプレゼンテーションはすべて英語で行われ、審査員もグローバルに活躍する経営者や専門家ばかり。出場者はIT、医療、化学、環境などの先端テクノロジー分野の企業が多い。彼らは大会期間中、投資家などのメンターによる助言やディスカッション、交流会などで学びあい、人的ネットワークを広げていく。

トップに立てる条件とは

AEAは年々規模を拡大し、アジア各国で出場予選会が開かれるほどだ。出場をきっかけに、事業を急速に成長させた企業も多い。

2012年に準優勝に輝いたフィリピン出身の起業家デービッド・クルス氏(ブルーウェイブグループCEO)は「2位だったからこそ多くのことを学んだ」と言う。「優勝したシンガポール企業は、癌の撲滅という大きなテーマに取り組んでいました。いかに夢を持つか、大きな課題を発見するかが、1位たるゆえんだと気づいたのです」

もともとIT機器の開発やOEM生産を手がけていたクルス氏は、大会での気づきから、フィリピンを悩ませる台風という課題に着目し、政府と共に災害時にも通信できるタブレット端末を開発。さらに、子どもを持つ母親向けにカスタマイズタブレットなど、社会性のある、ニッチマーケット向けの製品を次々に打ち出した。こうした取り組みがエンジンとなり、2012年に310万ドルだった売上は、今年2000万ドルを超える見込みだという。

アワードには起業家や学生のほか、新しい事業パートナーを探す民間企業、ベンチャーキャピタル、研究機関などが多数参加。彼らの目当ては出場者のプレゼンテーションだけでなく、AEAに訪れる世界トップクラスの経営者や投資家から学び、直接意見交換することだ。

2日目に開かれたパネルディスカッションには、500startupsのジェームズ・レヴァイン氏、グローバル・ブレインの鈴木伸武氏など、シリコンバレーやアジアで活躍する投資家5人が登壇し議論を繰り広げた。

最終審査員は石倉洋子氏やイェスパー・コール氏など豪華な顔ぶれ

中でも会場の関心が高かったのは、優れた投資家たちがどのようなチェックポイントで投資を判断しているかだ。各々がターゲットとするステージが異なるため、チェックポイントもKPIの質、リーダーシップ、市場の潜在性、目的意識などさまざまだったが、多くの投資家に共通していたのが「チーム」という言葉だった。

「F1チームのような組織ができているか。つまり、沢山の難しい課題に直面した時、それを乗り越えていける組織力があるのか」(鈴木伸武氏)、「チームが規律ある実行力を持っているか。会社の成長段階にあわせて経営幹部チームも強化・拡充することができるか」(フィデリティグロースパートナーズのデービッド・ミルスタイン氏)。シード段階でも将来を見据えたバランスのよいチームづくりが必要という指摘に、参加者らは深く頷いていた。

パネルディスカッションは500startupsのジェームズ・レヴァイン氏など、著名投資家が登場

日本企業サイフューズが優勝

今回、3日間の激闘を勝ち抜き、見事グランプリに輝いたのは日本企業のサイフューズ。生きた細胞を3次元積層するバイオ3Dプリンターを開発し、患者自身の細胞からカスタムメイドの組織・臓器をつくる再生医療の実現を目指している。代表の口石幸治氏は、「他国の出場者やメンターから大きな刺激と気づきを得ることができ、3日間でプレゼン用スライドを入れ替えて最終審査に挑みました。ビジネスプランコンテストに出場したのは初めてで、本当に嬉しい」と喜びを爆発させた。

優勝したサイフューズの口石幸治代表取締役

2位はスマートフォン向け光学ズームカメラモジュールを開発するDynaOptics(シンガポール)、3位にはデジタル決済ソリューションを提供するSoft Space Sdn Bhd.(マレーシア)が選ばれた。「回を重ねるごとにビジネスモデルも熱意も、アイデアもどんどん良くなっています。今年は本当に審査が難しかった。この経験とネットワークをぜひ活用してほしい」と最終審査員のイェスパー・コール氏は出場者を讃えた。

DynaOptics(シンガポール)はカメラモジュール技術の可能性をプレゼン、2位に輝いた

AEAは今後、さらに出場国を増やすとともに、日本企業の海外進出や海外企業の日本進出のためのプログラム・パートナーシップを強化していく方針だという。次世代の起業家を育てるネットワークの形成を目指し、AEAは進化を続けていく。

ネットワーキングパーティなど起業家同士の交流を促す企画も行われた

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