日本の成功定義が変わる 「本音」が出てくる対話の場
「私たちは未来が見えない時代を生きている」。それは、成功した古い構造はなくなりつつあり、しかし新しい構造も生まれていない、日本産業の現状を表しているのではないだろうか。
この言葉を発したのは、社会変革ファシリテーターのボブ・スティルガー氏。北米や南アフリカ、ジンバブエなど世界を舞台に、地域や組織にイノベーションをもたらす対話づくりを行っている。
「誰もが社会に対して不安を感じ、疑問を持つ時代になりました。現状の学校や教育、医療のシステム、インフラはこのまま維持できるとは限らない。今こそ未来を創造し、そこから社会変革を起こす時です」
2011年の東日本大震災の発災後は、たびたび来日し、復興のための対話の場づくりにも取り組んできた。同氏は震災直後、「日本の成功定義が変わる」と話した。
「震災を機に東北だけでなく、日本全体で社会変革に立ち上がる人が増えました。今本当に必要なことは何か、深く考える人が増えたのです。日本の復興の中に、世界が学ぶべきものがあり、市民対話で社会を再創造するモデルケースが生まれると信じています」
震災後の活動をもとに、社会を変えるための「コミュニティ再生」について考察したのが本書である。
深い場をつくる“パワフル・クエスチョン”
社会変革は「最小単位のチームをつくること」から始まる。信頼できるチームを形成するには、本音を言い合える対話の「深い場」が必要だという。
「深い場」をつくる要素を3つあげている。(1)場にいる人が「好奇心」を持つこと、(2)互いに「尊敬の念」を持つこと、(3)考えや疑問を共有する「寛大な心」を持つこと。これらが揃った「安全・安心な場」で、人々は本音を話すことができる。
さらに、場に参加しやすくする要素が「パワフル・クエスチョン」だ。
「社会変革を起こすには、自分たちが持っているものに気づくことが大切。私は答えではなく、常に“問い”を投げかけます。その上で、自分たちの強みや仲間、それぞれが持つ知識に気づいていく。そして、自分たちの組織や地域を信じることができたとき、変化が起こる。つまり、参加者が考えるための“パワフル・クエスチョン”が重要なのです」
未来を拓く“対話”に社会変革の期待が高まる。
- ボブ・スティルガー
- ニュー・ストーリーズ共同代表、社会変革ファシリテーター。
まちづくりは補助金頼りではなく、持続できる仕組みが必要。著者の木下氏は「稼ぐまちづくり」と称し、行政も含めて、まちを一つの会社と見立てて経営し、利益を得ながらまちづくりを行う。その経営にあたって、各地でぶつかる壁の回避方法を「10の鉄則」としてまとめたのが本書だ。地方に潜むビジネスチャンスを見出し、持続できる地方創生のため、「経営する」視点を提案する。
新規事業を立ち上げる時、市場の経済動向を把握することは必須である。新興国では、ほぼあらゆる国が、ここ10年間、一斉に成長した黄金時代であった。しかし世界経済の成長力は低下し、新興国を個別に見るべき時がきている。これから突出した成長を遂げる国=「ブレイクアウト・ネーション」となるのはどこか。未来を見据え、成長の素質を持った新興国を見極めるヒントを提示する。
少子化、人口減少が急速に進む日本。もともと移民を受け入れる文化がない国だが、「短期移民」、つまり外国人観光客で人口を増やすことで活路が見いだせると著者はいう。昨年の外国人観光客の増加が注目されたが、日本は観光潜在力が高いにも関わらず、外国人観光客が1300万人しかこない観光後進国。日本が「観光立国」になるために何が不足し、これから何をすべきかを明らかにする一冊。
名著
イノベーションのDNA
イノベーターの内部構造を理解することは、より良い事業を発想するために重要である。『イノベーターのDNA』は、ビジネス領域におけるイノベーション研究の第一人者による膨大なイノベーターの分析記録である。
イノベーターの最も基本的なスキルは「関連づける力」であり、「質問力」「観察力」「ネットワーク力」「実験力」が「関連づけ」をするための土台となっている。広くアンテナを張りながら、新しいことに挑戦し、予想外の組み合わせをうみだすことがイノベーターの基本形である。DNAという言葉は、生まれついた才能を思わせるかもしれないが、5つのスキル自体は特異なものではない。自分自身の中にある5つのスキルを掘り起し、高めれば、イノベーターへの道は全ての人に開かれている。
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