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ゲスト・吉田眞市氏 (日本コロムビア代表取締役社長)

 

左)吉田眞市氏(日本コロムビア代表取締役社長)、右)筆者

--1910年創業の日本最古のレコード会社、日本コロムビア。時代の流れで経営環境が変わり、2001年には企業再生ファンドのリップルウッドに買収されました。その後、2010年に平澤創氏率いる京都のIT関連企業フェイスがリップルウッド持分を取得し、日本コロムビアは、フェイスグループの持分法適用会社となりました。さらに、持株比率が5割を超えた2014年からは子会社となっております。本日は、ちょうどその頃、副社長として経営に参画し、2015年4月1日付けで社長に就任した吉田眞市氏をお迎えしています。

伊藤忠商事を皮切りに、アキバ系コンテンツ会社のブロッコリーなどでご経験を積まれ、2009年からフェイスグループの幹部として様々な関連会社の経営に携わってこられました。今日は新社長としての抱負を伺いたいと思いますが、まずは駆け足でご自身のこれまでの軌跡を振り返っていただけますか。

吉田: 新卒で入った伊藤忠商事には12年弱お世話になりました。米国駐在期間中も含め、事業経営に関わる機会が多く、早い段階で事業にハンズオンすることの面白さを知りました。そういった背景もあり、ゲームやアニメ等のコンテンツを扱うブロッコリーに転職したのです。この会社は2001年にジャスダックに上場したのですが、ネットバブル崩壊もあり、自分が入社した2003年時点では赤字状態でした。

--保守的な大企業からネット系、しかもサブカル系の会社に転職するのは大きな勇気がいるように思えますが、抵抗感はなかったのでしょうか。

吉田: 抵抗感は特になかったです。その時、選択肢は3つあって、一つ目は伊藤忠に残っていずれ子会社の経営に携わること。もう一つは先輩の立ち上げた事業を手伝うこと。そして最後にブロッコリーに転職することでした。

--最後のオプションを選ばれたわけは?

吉田: とにかく経営に携わりたかったので、伊藤忠に残るというオプションも考えたのですが、当時子会社経営陣の若返りの空気が生まれていたものの、やはり30代の社長は論外でした。早くても40代でしたので、それまで待つことは考えられませんでした。また、大企業のサラリーマンですと、「何年後にどうなるか」というのがある程度予測できるのも面白さに欠けると感じたのです。ブロッコリーについては、予備知識はほとんどありませんでしたが、アキバ系アニメ・ゲームの企画・制作と直営小売店運営に興味を持ったことと、創業社長に魅かれたことが大きかったです。

--つまり、清水の舞台から飛び降りる感覚ではなく、予定調和的な世界と決別して新たなチャレンジをしたいというお気持ちが強かったわけですね。

吉田: ええ、できることなら、自分の今までの経験や人脈が活かせないところに身を置いてどこまでできるか試してみたいと思いました。それで2003年1月からブロッコリーの経営に4年ほど携わりました。多くの会社とアライアンスを組み、いろいろ学びました。最後の2年間は社長として会社を引っ張り、黒字回復を達成した暁に会社を去ることにしました。

--その後、お知り合いの組成した国内独立系ファンドで1年半ほどお仕事されてからフェイスグループに入られたのですね。

吉田: ええ、ブロッコリー時代からお付き合いのあったフェイスの平澤社長に相談したところ、グループ企業の経営を一緒にやろうと言って頂き、ちょうど市場も冷え込んでおりファンド運営も厳しい状態にあったこともあり、転職を決意しました。

--2009年1月から参画されたフェイスグループは、着信メロディを考案・実用化した会社として有名ですが、けっして一本足打法というわけではないんですよね。

吉田: 確かにフェイスは着メロで東証一部上場企業になりましたが、ちょうどその頃、エンターテインメントの世界で新しい価値を創造するための次の一手をどうするかを幹部が真剣に考えている時期でした。4年間過ごしたブロッコリーでのエンタメ業界経験を基に、自分なりに貢献できる部分があると確信し、参画することにしたのです。

--いくつかフェイス関連企業の経営に携わってこられたそうですが、その中でも特に印象的だった会社についてお話しいただけますか。

吉田: ジャスダック上場企業だったウェブマネーという会社のお話をしましょうか。2010年6月に社長として移籍したのですが、この会社は、オンラインゲームなどのコンテンツ向けの電子マネーを扱う会社でして、移籍したときはフェイスのグループ会社だったのですが、翌年に売却の話が出て、フェイス持分はKDDIに売却されました。同時にKDDIは株式公開買い付けを行い、ウェブマネーは完全子会社化され上場廃止となりました。もはやフェイスグループでもないし、フェイスに戻る選択肢もあったのですが、KDDIからの要請もあり、KDDI傘下となった新生ウェブマネーの社長を続投する選択をしました。

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