2015年7月号

災害に強い街づくり

迅速な情報集約と多様なメディア発信 ~東京都豊島区~

月刊事業構想 編集部

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災害発生時、住民が適切な行動をとるためには、行政が地域の現状を的確にとらえ、その情報を正確かつ迅速に住民に伝えることが肝心だが、その際、把握が必要な情報は、災害の種類や地域の特性によって異なってくる。

「群衆行動解析技術」を搭載したカメラでは、日常の人の動きと異なるところを発見・通報するため、ずっとモニターを見ている必要がない

東京都豊島区は、池袋のようなターミナル駅がある一方、区内の面積の40%を、いわゆる木密地域が占めるなど、住宅も多い。そのため、大規模な地震が発生した場合、ターミナル周辺では、帰宅困難者の大量発生が見込まれ、木密地域では、家屋倒壊や火災の発生が危惧されている。実際、東日本大震災では、池袋駅周辺に帰宅困難者があふれるという事態が発生した。そこで、豊島区では、災害対策においては、帰宅困難者対策と木密地域対策に重点を置き、防災カメラを活用した情報収集に力を入れている。

群衆の異常な動きを察知して通報するシステムを導入

防災カメラというと、ビルなどの高い場所に設置し、1台で広範囲を撮影するのが一般的だが、池袋周辺は高いビルが多いため、高所にカメラを設置すると死角ができてしまい、地域全体が見えない。そこで、豊島区では、2015年5月、新庁舎への移転を機に総合防災システムを刷新。低い位置に多数の防災カメラを設置して、区内全域を細かく分けて監視できるようにした。

設置した防災カメラは合計51台で、1つのエリアを2カ所のカメラが自動旋回して監視できる体制を整えている。この防災カメラのうち、ターミナル駅周辺に設置された17台には、群衆検知機能を付加した。

これは、NECが開発した「群衆行動解析技術」を使ったシステムで、日頃は、防災カメラで人の流れを記録し、平常時の人の動きとしてDB化する。そのデータと比較し、「人の数が通常より多い」、「群衆の動きが一方向に集中している」など、通常の動きと異なる群衆の動きがあると、それを自動で検知して通報するというもの。人を、個人ではなく、“固まり”としてとらえて解析するため、個人を特定することなく、群衆の動きを把握できる。豊島区がこのシステムを導入したのは、東日本大震災の経験からだ。

「あの日は、午後に地震が発生し、夜に向かって時間を追うごとにどんどん駅周辺に人が集まっていった結果、群衆がふくれあがってしまいましたが、そうした駅前の状況を区がつかめていなかったため、迅速な対応ができなかったのです」(総務部防災危機管理課長 樫原猛氏)

時間とともに変わる駅前の人の流れに異常があった時、それを自動で検知・通報できれば、必要な対応が迅速にとれる。そう判断し、システムの導入を決めたのだ。

51台の防災カメラで、豊島区全域の情報を把握できるようにしている

多様なメディアを活用し確実に情報を伝える

災害時は、情報の収集と並び、情報の伝達も重要になる。東日本大震災では、地震の揺れや津波により防災無線が倒壊・破損、電源喪失などで利用できなくなった結果、情報が住民に十分に伝わらないケースもあった。

そうした経験を踏まえ、国も防災無線以外の情報伝達手段の整備を推進している。豊島区は、前述の通り、住民に加え、商業施設などを利用する区外からの訪問者も多いため、住民以外にも広く情報が伝達できるよう、複数の伝達手段を導入している。その1つは、防災無線だ。屋外に設置されたスピーカーのほか、町会の役員宅や学校等の区の出先機関に設置した戸別の受信機を介して情報を提供している。

また、CATVのテロップでも情報を伝えている。このほか、ツイッターやフェイスブック、ホームページなど、ICTを活用した情報発信も行っている。さらに今後は、デジタルサイネージによる情報発信も検討しているほか、鉄道会社や百貨店などとの間で協定を結び、これらの施設での情報発信にも取り組んでいきたいと考えている。

なお、災害発生時には、迅速な情報発信が求められるため、豊島区では、異なるさまざまな媒体に対し、ワンクリックで情報を送信できる伝達制御システムを導入している。発信した情報は、音声でも文字でも配信できるため、手間をかけずにさまざまなメディアを介して情報を伝えることができる。

警察や消防など連携先との効率的な情報共有も必要

災害発生時には、自治体に加え、警察や消防、場合によっては自衛隊も出動するため、そうした組織との効率的な情報共有も求められる。

「それぞれの組織が独自に収集した情報に基づいて別々に行動するよりも、災害対策本部に情報を集約し、各組織が連携して行動する方が、より効率的な対応ができます。ただし、災害時の混乱の中で、どう情報を共有するかを議論する余裕はないでしょうから、あらかじめ関係機関との間で、話をしておく必要があるでしょう」(樫原氏)

加えて、対策に乗り出す際には、より具体的な情報が求められる。樫原氏は、「集まった情報を取捨選択し、最も必要となる情報を必要な機関に迅速に提供できるスキルを磨くことも今後の課題」だと述べた。

  1. 取材協力:東京都豊島区総務部防災危機管理課課長 樫原猛氏
  2. 防災危機管理担当係長(計画・情報) 上野泰弘氏
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