企業間データ共有で新サービスを 「ID連携」のポテンシャル

パーソナルデータ利活用の次の潮流は、企業それぞれが保有するデータを消費者の同意のもと安全に連携させ、新しいサービスや価値を生み出すことだ。その実現の焦点であるID連携とVRMサービスについて解説する。

3月に開かれたシンポジウム「ID連携トラストフレームワークが築く社会」では、経産省のほか大日本印刷やヤフーなどトラストフレームワーク関連事業者が登壇、活発な議論が行われた

ID連携トラストフレームワーク

近年、ビッグデータ利活用の潮流の中で、データ駆動型イノベーションという言葉が聞かれるようになった。現在は企業それぞれが閉じた状態でデータを利活用しているが、今後は、企業が壁を乗り越えてデータを共有・活用することで、新しいサービスや価値を生み出そうというアイデアだ。

日本では2014年4月にデータエクスチェンジコンソーシアムが設立され、企業内データを交換・共有するための環境整備やガイドラインの検討が始まった。わずか1年で約100社が参加する規模に成長している。

しかし、企業が保有するデータの中には、顧客の個人情報やパーソナルデータが多く含まれる。こうした機微情報を安全に流通させるための仕組みを築こうと、経済産業省が中心となり、ID連携トラストフレームワークというプロジェクトが2013年から本格化している。

消費者は現在、利用するITサービスごとにIDやパスワードを設定し、本人確認を行わなければならない。それ故、同じID・パスワードを複数のサービスで使いまわすことが多く、情報セキュリティのリスクも増大している。この解決には、アイデンティティ情報を企業間で交換することが必要だ。そのID連携・データ連携のルールを明確にし、ルールに基づいて連携が行われていることを認証・監査する仕組みがID連携トラストフレームワークである。

これは、消費者の手間が減るという単純なメリットだけでなく、新産業や新サービスを生む可能性を秘めている。本人の同意のもと、嗜好や商品購入履歴を活用して複数のITサービスが連携することで、複合的できめ細やかなコンシェルジュ型サービスが実現するからだ。

ID連携トラストフレームワークのしくみ

トラストフレームワーク無

 

トラストフレームワーク有

出典 : 経済産業省

 

外国人観光客で実証

経済産業省は外国人観光客のおもてなしをテーマにID連携の実証事業を実施 Photo by Takayuki Miki

ID連携トラストフレームワークでは、消費者の身元確認や本人確認を行う事業者であるIdP(アイデンティティ・プロバイダー)が、消費者の代理人として、他のサービス企業にデータを受け渡す。とは言え、なかなか消費者に利用イメージはつかみにくい。そこで経済産業省はアイデアソンや実証事業を通じて、ID連携トラストフレームワークの有効性を発信している。

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