起業率は欧州一 エストニアに学ぶ国民ID制度の未来
人口130万人のエストニアは、年間起業数が2万件。欧州一イノベーティブな国の基盤には、ID制度を中心とした電子政府化プロジェクト「e-Estonia」がある。エストニア投資庁日本支局長の山口功作氏がその戦略を明かす。
― エストニアが「電子政府化」を決断した理由を教えてください。
1991年の独立回復の直後から、ビジネス界だけではなく行政も合わせて課題になっていたのは生産性の向上です。エストニアは国土でいうと九州と同じぐらいありますが、人口が約130万人で福岡市より少ない。カバーしなければいけないエリアが広いうえに、少子高齢化も進行していました。過疎地域や、もともと人口が少ないような地域で、全ての行政サービスを人のいる窓口で提供するのは難しい。その解決手段がITを活用した効率化でした。
もう一つは経済的な理由です。人口が少ないので、同じ時期に独立を回復した人口が多い東欧諸国のように、安価な労働力で重工業を誘致するというモデルは成り立ちません。そこで、理数系の教育水準が高いことに着目し、ITなど頭脳産業を集積・育成する方針を定めました。
民間企業の参画が肝心 官民3000以上のサービス
―どのような段階を踏んで「電子政府化」を進めていったのでしょう?
創成期から非常に高いレベルの認証技術でインターネットバンキングを開始していた金融機関との間で、IDカードの企画時点から連携できたことが、利活用の促進には大きく貢献したように思います。民間企業の利活用なくしてユニバーサルサービスはないという考えの下、このように、民間企業による参画が公的認証制度の利用を促進するためのきわめて重要な要素となりました。エストニアではもう、我々は電子政府という呼称は少なくなり、デジタル社会と表現しています。
e-TAXも2000年から始まっていますが、オンライン化が本格化したのは2002年にIDカードを発行してからですね。保険証や免許証としても使えますし、IDカードによるサービスは増え続けています。行政手続きも99%以上がオンライン上で完結できますが、できないことが2つだけあります。それは公証人の介在を必要とする手続きと、離婚です。離婚はシンボリックな意味合いが強いのですが。
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