極限の場所で書き記す「世界」と「自身」の物語

ジャングルの奥地、人の住めない極寒の土地、広い海の向こう側。かつて、地図にない場所を目指して、冒険の旅に出た開拓者たちがいた。そんな誰もしたことのない冒険に憧れを抱く角幡 唯介は、謎に包まれていたツアンポー峡谷の解明を皮切りに、現代の冒険の旅に出る。未知への旅を通じて自らを見つめ、内に宿る発想を他者へと発信するために。
text by 小島 沙穂 Playce

 

元々、誰もやったことのないことをしてみたかった。でも、何をすればいいのかまったくわからなかった。そんな想いを抱いていた大学2年生の角幡は、ある日大学探検部の部室の扉をたたく。彼が未知なる場所への冒険と出合い、そのとりことなるまでに時間はかからなかった。

彼が特に心を惹かれたのは単なる山登りではなく、未踏の地を行く冒険旅行。しかし、90年代後半当時、すでに“世界”はほとんど知りつくされた後だった。情報も発達し、未知なる領域を切り開いていく時代は過去のものとなっていた。

そんなある日、角幡は偶然チベットのツアンポー峡谷について書かれていた本に出合う。ツアンポー川の周辺にあると言われる『空白の5マイル』の存在。地球上に残された、最後の秘境に角幡は想いを募らせる。このツアンポー峡谷への冒険が、彼の探検家としての人生のはじまりとなる。

自身の体験と想いを書き記す

パソコンが一般家庭にも手が届きやすくなり、インターネットが身近になり始めた90年代半ば。その頃、角幡も自分のパソコンを手に入れていた。

早速、自分のホームページを立ち上げ、国内の珍しい沢登りの記録、日本からニューギニア島までヨットで向かう航行記録やさらにそこから川をさかのぼり山に登る冒険旅行など、自身の活動を記録していった。

「元々、僕は自己表現欲求が強かったんです。自分の考え方や抱いている世界観があって、それを下地に冒険している。その想いと経験を行動と文章で形にして、表現したいという欲求がありました」

ノンフィクション作家として活動を始めたのはその延長。彼の冒険は未知への探究心と執筆のための取材の両方を兼ねる。

「やりたいこと、行ってみたいところはたくさんあります。山に登ることは好きですし、本当は、僕もヒマラヤに登ってみたい。でも、僕は山登りからは何も書けない、自分の表現にならないと思う。だから、ヒマラヤではなく別の目的地を目指すんです」

旅の目的地や行程の選択基準は、その旅の経験から何が書けるか、だ。

「僕の場合、探検に至る過程も含めて本の中で書きたいと思っているので、『どこに行ったらどんな冒険ができて、どんなことが書けるのだろう?』ということを常に考えています。書籍の構成と旅の構想は一続き。両方があって初めて僕の冒険となる。どちらが先かというのは難しいところです」

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