バイオマスで農家に新しい富 ドイツに学ぶエネルギー活用
ドイツは地方と個人を主体にした再生可能エネルギーの導入、特に熱エネルギーの活用で世界をリードしている。急成長の裏には、巧妙な戦略があった。
ドイツでは電力消費量の27%以上を再生可能エネルギーが占めるまでになっている。しかも、発電設備の3分の2は個人や小規模事業主が所有しており、地域主体の再エネ普及が進展している。また、地域資源としての森林資源や家畜糞尿などの有機系廃棄物のエネルギー利用が進んでおり、再生可能エネルギーに占めるバイオマスの比率は発電の3割、熱の9割に達している。
バイオマス発電で主体となるのは、バイオガスである。バイオガスとは、家畜糞尿とトウモロコシなどのエネルギー作物、もしくは食品廃棄物などの有機系廃棄物を混ぜてメタン発酵させて、エネルギーを取り出すものだ。
その担い手は、ほとんどが地方の農家だ。ガスエンジンでの発電なので、エネルギー効率も良く熱も利用しやすく、数十kWから利用が可能であるなど、地域での取り組みが容易である。このため、2004年の固定価格買取制度(FIT)改正を契機に急拡大し、わずか8年余りで再エネ発電の2割を担うまでに成長した。2013年末現在、7700カ所ものバイオガスプラントが稼働し、再エネ発電の2割を担うまでになっている。売電と地域熱供給網を組み合わせるのが一般的な方法で、農村に新しい富をもたらしている。
FIT制度設計の妙
「バイオマスやバイオガスがドイツで普及するきっかけとなったのは、2000年にスタートした再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)です。しかし、最初からうまくいった訳ではありません」と指摘するのは、国内外で林業・バイオマスの研究に取り組む富士通総研上席主任研究員の梶山恵司氏(世界バイオエナジー協会常任理事)。
当初、バイオマス発電に関わる制度は規模別3段階という単純な設定だった。この結果、木質系の大規模発電所の建設ばかりが進み、なおかつ熱利用はせず発電だけ行うという、安易な方向に流れていった。ある意味、日本におけるバイオマスの現状と似通っている。
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