亀田メディカルセンター 顧客満足の源はAlways Say YES!

なるべくなら行きたくない場所のひとつに病院がある。ところが、入院した人の多くが「またここに入院したい」と願う病院があった。アクセスは悪くても、医療と「もてなし」は世界一流だという。国内外から患者が殺到するその病院とは?

Kタワーの病室は全室個室のゆとり空間

房総半島の南東部、千葉県鴨川市。高齢化と人口減少が進行し、2030年には高齢化率が43.7%に達すると見込まれる人口3万4千人の地方都市だ。その海岸沿いに亀田総合病院を中核とする亀田メディカルセンターがある。アクセスは決して良いとは言えず、東京都心から2時間強かけて高速バスや特急電車で来院する人が多い。健康体でも、かなりの疲労を感じる距離である。

しかし、それにもかかわらず、連日3,000人もの外来患者が、地元はもとより国内外から詰めかける。全国の国公立病院の約6割、私立の約4割が赤字経営を余儀なくされ、破綻・廃業へと追い込まれるところが跡を絶たない中、ここは、黒字経営が続いている。

診療科34科、病床992床。常勤医師約500人、看護職約1000人など職員合計約3000人。東京と限らず大都市に行けば、他にも大病院は多々存在するのに、なぜ、人びとは、そこまでして亀田メディカルセンターへと向かうのだろうか? 理事長の亀田隆明氏(62)にお話を伺った。

亀田 隆明 医療法人鉄蕉会 理事長

「他ではあり得ない」快適性

「(今のような亀田メディカルセンターがあるのは、上記のような)地域的特殊性ゆえです。他の病院には出来ないことを次々にやっていかない限り生き残れない、チャレンジし続けざるを得ない立地条件にあるのです」と亀田氏は語る。その言葉を裏付けるように、「他ではあり得ない」快適性がここでは多々実現されている。

Kタワーでの入院生活を見てみよう。全室個室で、大きな窓からは房総の海が一望できる。温水便座付トイレ、シャワー、エアコン、冷蔵庫が完備し、ベッドサイドのタッチパネルを操作すれば、朝・昼・晩の食事メニューを自由に選択できる。しかも、最上階の展望レストラン(日本を代表する有名ホテル出身のシェフも在籍)から、好きなメニューをルームサービス(別料金)として注文することもできる。

その端末からは、テレビやインターネットも利用できるし、登録すれば、自分自身の病気や薬について調べたり、カルテを閲覧したりすることができる。

また、患者、病院スタッフ、家族・友人をも包含した“チーム医療”というコンセプトから、患者が特に認めた人を「サポーター」と位置づけ、ICカード(=「サポーターカード」)を発行して“24時間見舞いOK”としている。たとえば、都内で仕事を終えた家族が高速バスで夜、見舞いに訪れ、各病室のソファーベッドで休み、翌朝、そこから出勤したりする。

さらに、愛犬用のペットホテルが隣接しており、入院期間中、大切なペットを預けておくことができるほか、トリミングもしてもらえる。Kタワーに限らず、全体に言えることだが、換気には細心の注意が払われ、院内に病院独特の異臭はない。

そして、過疎化が進行する地域の病院というイメージからは程遠いハイセンスで都会的なショップが立ち並んでいる。実際、「サポーター」が来院する前などに、院内の美容室で身繕いする女性患者も少なくないという。一般には我慢と諦めに支配されがちな入院生活であるが、少なくとも、ここでは、日常生活に限りなく近い「生活の質」が確保されていることが痛感される。

また、病院と言えば、通常、各病室入口に患者の名札が掲げられているが、ここではプライバシー保護の観点から、名札はない。これだけの好環境でありながら、Kタワーの1日当たりの室料が13,000円(税別)というから驚く。この金額は、民間の医療保険で1日1万円の入院給付金契約をしている人が多いゆえの設定なのだそうだ。

以上のような「まさか、そこまでしてくれるとは思わなかった」と感じさせるホスピタリティを可能にしているのが、亀田メディカルセンターの特性を決定づける有名なモットー“Always Say YES!”である。

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